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「テスラ」超えなるか…チューリングがAIで完全自動運転実現へ

「テスラ」超えなるか…チューリングがAIで完全自動運転実現へ

AIで生成した完全自動運転EVのコンセプトカーデザイン

チューリング(千葉県柏市、山本一成最高経営責任者〈CEO〉)は、完全自動運転「レベル5」相当の電気自動車(EV)の開発を進めている。人工知能(AI)を使用し、走行中にカメラで撮影した映像を瞬時にAIが分析して運転する。2029年までの完成が目標だ。

同社は21年8月創業のスタートアップ。山本CEOはAI将棋プログラム「Ponanza(ポナンザ)」を開発し、佐藤天彦名人(当時)を破ったことでも有名だ。「米テスラを超える」(山本CEO)ために完全自動運転の実現とEV量産に乗り出し、30年までに年間1万台の生産体制構築を目指している。

「シンボル」による道路標示の理解

特に大規模言語モデル(LLM)の開発に注力する。LLMは大量のテキストデータを学習して構成するAIモデル。自動車の運転で求められる能力は、車道外側線に沿った運転操作や速度制御だけではない。道路表示や人による交通整理指示を認識して判断する必要がある。同社の自動運転はレーダー類を使用せず、カメラによる映像分析のみで制御し、さまざまな道路事情に対応できる。

開発には膨大な走行映像データが必要となる。その距離は国内道路総延長と同等の約125万キロメートル。現在、軽自動車を複数台使用して映像データを収集中だ。車体デザインの設計にもAIを使用する。3月に発表した完全自動運転EVコンセプトカーは、画像生成AIを使用してデザインした。短時間で多くのデザイン案を生み出すことが大きな利点。指示テキストや各種項目を調整して画像生成を繰り返し、デザインイメージを確定した。

量産に向けた準備も進める。2月には千葉県柏市に車両生産工場を新設した。25年に自動運転「レベル2」相当の自社設計EV100台を販売する方針。26年には完全自動運転EV生産用の大型工場を取得する予定だ。既存の完成車生産工場を買い取り、コストを抑えて工場を確保する。10年にテスラがトヨタ自動車と米ゼネラル・モーターズの旧合弁工場を買い取り、自社工場化したことにならう。28年の量産開始を見込む。

すでに3月には市販車をベースとして部分的に運転を自動化する「レベル2」相当のシステムを搭載した車両を一般消費者に販売した。山本CEOは「AIの能力は指数的に向上し続けている。将来的には販売した車からもデータを取得したい」と話しており、今後も完全自動運転EVの実現に向けて開発を進める。

日刊工業新聞 2023年07月27日

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