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「ガリウム」の中国による輸出規制、日本の企業に影響はあるか

「ガリウム」の中国による輸出規制、日本の企業に影響はあるか

三菱ケミカルグループの窒化ガリウム基板

中国によるガリウム関連製品の輸出規制強化を受け、日本の素材メーカーや半導体メーカーは情報収集を進め、その影響を注視している。今回の規制は戦略物資などの輸出を規制する「輸出管理法」などに基づく措置で、8月1日から実施される予定。対象の窒化ガリウム(GaN)などは次世代パワー半導体向けに今後の普及が期待されており、長期化すれば企業の技術・製品開発に支障をきたしかねない。

西村康稔経済産業相は4日の閣議後会見で、中国商務省がガリウムなど鉱物資源の輸出管理強化を公表したことに関連し「今後中国側にその意図や運用方針などを確認する」とした上で、「仮に国際ルールに照らして不当な措置が講じられているのであればルールに基づいて適切に対応したい」と話した。日本への影響は「精査している」と述べるにとどめた。

日本政府は7月から半導体製造装置の輸出管理強化を始めるが今回の中国の措置が「関連して講じられたものとは承知していない」とした。日本の措置は「安全保障上の理由から講ずるものであって特定国を念頭に置くものではなく、国際ルールに整合的に行っている」とあらためて強調した。

ガリウムを使ったGaN基板はシリコン系基板と比べて電力損失が少ない点などが特徴で、パワー半導体や第5世代通信(5G)デバイス向けで需要増が期待されている。

そのGaN基板を手がけるのが、三菱ケミカルグループと住友化学だ。三菱ケミカルグループは複数のサプライヤーからガリウムを調達しており、中国産もあるという。ただ一定程度国内在庫があり、今後の影響については調査中。住友化学も影響を含めて情報収集しており、対策を取っていく考えだ。 

DOWAホールディングス(HD)は子会社のDOWAエレクトロニクス(東京都千代田区)で高純度ガリウムを手がける。同社で製造するウエハーや赤外発光ダイオード(LED)などの原料として使用するほか、社外向けにも販売し、世界トップシェアを誇る。

同社が利用するガリウムはリサイクル由来と中国などからの鉱石を製錬して調達。その比率は半々という。「現在、影響範囲について調査を始めているところ」(DOWAHD)で、今後の具体的な対応などは未定。

GaN系半導体レーザーでトップシェアの日亜化学工業は、化合物半導体用の高純度ガリウムを自社製品の基板に使用するほか、材料販売も行う。中国からの原料調達に関して「影響を調査中」(担当者)とする。ただ「8月以降すぐに供給が細るとはみておらず当面の調達のめどは立っている。手続きの関係など長期的な影響を注視している」とした。

京セラはGaNレーザー技術を使った製品の早期事業化を目指している。同社は21年にレーザー光源などに使われるGaN技術を持つ米SLDレーザーを500億円弱で買収した。現在、京セラの技術などと融合させ、目に見える可視光を高速で明滅させてデータ通信する可視光通信技術の開発に着手するなど新製品の事業化に取り組んでいる。

ロームは2022年にGaNを使ったパワー半導体の量産体制を整備。同パワー半導体は従来のシリコン製と比べて電力ロスを6割減らせ、高速スイッチング性能を持つのが特徴だ。高頻度で電流のオン・オフが求められるデータセンターや通信基地局向けでの需要が期待されている。

ルネサスエレクトロニクスはニデックと電気自動車(EV)向け駆動装置「イーアクスル」の次世代品の開発に着手している。その中でGaNのパワーデバイスを製造する意向を持つが、具体的な計画は未定。ルネサスでは中国の規制について「状況を注視していく」としている。

ソニーグループ子会社で半導体の生産を手がけるソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)では「情報収集をし影響を調査中」としている。同社は特殊なセンサーやレーザーの一部にGaNを使用している。

半導体メーカー各社のガリウムを活用した事業は始まったばかりで、売り上げに与える影響は限定的。短期的に今回の輸出規制を見た場合、影響は少ないとみられる。

日刊工業新聞 2023年07月05日

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