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《中堅電子部品メーカーの生きる道#03》東光&本多通信工業

《中堅電子部品メーカーの生きる道#03》東光&本多通信工業

本多通信工業の佐谷社長(左)と東光の山内社長

**東光・山内公則社長
 ―スマートフォン向け部品の需要動向と事業戦略は。
 「中国スマホを含め端末が高機能化し、1台当たりに搭載される部品採用数はまだ伸びる。従来進めている小型化の追求に加え、材料開発に一層力をいれたい。新製品に使うのはもちろん、既存品にも新材料を採用し特性を高める。製品競争力を底上げし、業界での優位性を維持する」

 ―親会社である村田製作所との連携強化が期待されています。
 「当社が持つ外資顧客に対する部品の販売権譲渡がほぼ完了した。村田製作所の巨大な営業網を活用し、開拓しきれていなかった顧客に部品を拡販する。製品の研究開発面でも連携を強め、当社の材料開発技術と村田の技術を融合した新製品を出していきたい」

 ―力を注ぐ車載向けの受注状況は。
 「キーレスエントリーシステム用のアンテナコイルが車メーカーに採用が進み、一定の収益があげられるようになってきた。タイヤ空気圧監視システム向けも徐々に伸びてきている。電子制御ユニット(ECU)向けコイルは競合との競争が激しい。こちらも村田との連携で製品開発や営業を強化し採用拡大につなげていきたい」

 ―今期のコイルの生産計画は。
 「現状、月産5億個体制を築いている。はっきりとした生産計画は現在詰めているところ。変動が激しいスマホ部品の需要動向を見極めながら、計画をたてていく必要がある」

【記者の目・連携のシナジー明確に】
 東光は5月1日付で村田製作所の完全子会社になることを決めた。主力のパワーインダクターなど、製品の共同開発を進める上で必要だった煩雑な手続きを不要にし、特性に優れた競争力のある製品をスピード感を持って供給していく狙いがある。16年度以降は”村田・東光“の連合のシナジーがより明確に現れてきそうだ。
(聞き手=下氏香菜子)

本多通信工業・佐谷紳一郎社長


 ―次世代高速プラスチック光ファイバーが形になりましたね。
 「毎秒10ギガビット(ギガは10億)の長距離高速伝送と高い屈曲性を実現した。大量のデータを高速伝送する、フルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8K画像での活用を期待している。製品化して20年に10億円を売り上げる事業にしたい」

 ―新中期経営計画で20年の車載事業売り上げ100億円を掲げています。戦略は。
 「導入が進むであろう先進運転支援システム(ADAS)向けコネクター『ADASファミリー』の販売に力を注ぐ。中継用コネクターを発売し、ADASニーズに全方位で応えられるようになった。20年に売り上げの8割がADAS関係になると期待している」

 ―車載関連は、各社増産が見込まれます。
 「当然価格競争の激化を予想している。自動化による生産性向上で対抗したい。モノのインターネット(IoT)やロボットなどを積極的に導入する。これに伴い、現在中国で作っている一部の日本向け製品の生産を国内に移したい。中国の人件費高騰などのリスクも考え”地産地消“にしていく」

 ―他の地域に地産地消を適用する考えは。
 「現在、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域向け車載関連部品はほぼ全てを中国で作っている。ラオスで製造しタイから出荷する体制にする。また中国では、中国に特化して売れる製品を作る体制を整えたい」

【記者の目・新製品・技術 用途開拓を】
「種まき」の年と位置づけた15年は、設備投資や新製品・技術開発を積極的に行った。安曇野工場には物流ハブを開設し、物流体制も整えた。16年にどのような「新芽」が出るのか注目したい。ただADASの普及スピードや8K時代の到来は不透明。新製品・技術に関しては用途を開拓する横展開がカギとなりそうだ。
(聞き手=門脇花梨)
日刊工業新聞2016年2月26日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
東光は2012年に村田製作所と、本多通信工業は2008年に松下電工(現パナソニック)とそれぞれ資本提携している。そこからは両社とも順調に成長軌道に乗っている。現状では業界再編の成功例と言えそうだ。

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