ニュースイッチ

競争率10倍、東北大が女性教授を初公募して分かったこと

競争率10倍、東北大が女性教授を初公募して分かったこと

工学系女性研究者の活躍を後押しする(左から2人目は有働恵子教授=東北大提供)

現場教員の意識変える

東北大学大学院工学研究科が初めて実施した女性教授公募の競争率が10倍になった。ダイバーシティー・エクイティ&インクルージョン(DEI)重視の新たな選考法をDEIの課題が最も大きい工学系で確立。1日に3人が着任した。学内研究者の意識を変えるノウハウが注目されそうだ。(編集委員・山本佳世子)

このDEI推進公募では定年制5人の枠に約50人が応募。3人が既に着任し、残り2人を選考中だ。助教を雇用できるなど支援が手厚い。応募者の3割は外国籍で、国際競争力の向上につながることも確認できた。

1日着任の3人はそれぞれ大学、国立研究機関、企業の出身だ。1人は転居時の帯同支援策で、パートナーが同大研究者となるクロスアポイントメントを活用する。1人は中国出身の日本人だ。

審査は一般に、研究科各専攻に設置された選考委員会が、各分野の特性に沿った書類選考や面接で行う。委員はアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)のビデオ視聴、多様性配慮の選考チェックリストの確認などで、問題意識を共有した。

一方、研究科の選考委員会は通常、報告を受ける立場だ。今回は月1回程度と通常の倍で開催して関わった。全専攻に対する応募者の配属希望順をにらみ、課題の把握や情報共有とともに「バイアスが入っていないか」などを検討。対象者を励ますため、面接に進む候補者を多めに選ぶよう促したという。

工学研究科の教授公募は1年に3件ほど。競争率は数倍―10倍だが、女性の応募はゼロが続いていた。特定の狭い分野での公募はハードルが高いためだが、女性枠を設けることで50人もの応募があることが分かった。

日刊工業新聞 2023年04月06日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
女性研究者支援に消極的な機関・部局がよく口にするのは『女性を採ろうとしても候補がいない』というものだ。東北大でも通常の工学研究科の公募では、女性の応募ゼロが続いていた。その理由は、通常の特定の狭い領域での公募1人では、多くの女性が『◇学会で一目置かれているあの人くらいでないと。私なんて、とても無理』と最初から諦めているため、というもののようだ。今回は女性枠というのに加え、工学系全体と広い領域で一挙に5人というのが大きい。「それだったら、私にも可能性があるかも」と、50人が押し寄せる結果になった。「理系では女性の教授候補がいない」、それは単なる言い訳に過ぎないのかもしれない。

編集部のおすすめ