コマツ・クボタ・ヤンマーが最新技術で挑む…ICTは建設業を根本的に変えるか
建設機械で情報通信技術(ICT)活用の動きが強まり、建機各社は大型機だけでなく小型機でも対応を加速している。労働時間の上限規制が厳しくなる建設業の「2024年問題」を前に、人手不足がさらに深刻化すると見込まれるためだ。省力化に向けたICTの導入は、3K(きつい・汚い・危険)と言われてきた建設業の働き方を根本的に変える可能性を秘める。(大阪・大川藍)
「小型建機ならではのi―コンストラクションを提案したい」。幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された建設・測量生産性向上展で、クボタ建設機械営業第一部・第二部の渡辺啓吾部長はこう力を込めた。i―コンストラクションとはICTを活用して建設現場の生産性を高める取り組みで、国土交通省が推進する。
クボタは操縦席のモニター上で操作を支援する「マシンガイダンス(MG)」機能を搭載した建機の提案に力を入れる。同展示会ではトプコンの測量システム「杭ナビ」を導入したミニショベルをアピール。機体のセンサーや測量機から得た情報を基に建機の位置情報と3次元(3D)設計データを統合し、モニターで刃先の位置や角度を確認できる。設計面までの距離をリアルタイムに把握できるため、正確な施工が可能だ。
建機のICTは大規模工事用の建機が先行していた。国内最大手のコマツは、子会社のEARTHBRAIN(アースブレーン、東京都港区)と建設機械向けの遠隔操作システムの提供を開始。コックピット型の機体に乗り込み、モニターを見ながらハンドル操作を行えば、実際の運転席同様に建機を動かせるのが特徴だ。日立建機も、コンパクトなリモコンでラジコンのように建機を操作する遠隔操作対応の建機を展開している。
ただ、ここにきて小型機のICT活用が急速に進んでいる。「ここ数年は人手不足が深刻化し、小規模工事でもICT活用の動きが出ている」と、クボタの湯川勝彦常務執行役員建設機械事業部長は指摘する。同社はローカル測位技術(LPS)を用いて、初期費用を抑えたICT活用を提案し、小型建機の競争力を高めている。
ヤンマーホールディングス傘下のヤンマー建機(福岡県筑後市)は、クボタが展開するMGに油圧制御を加えた「マシンコントロール(MC)」機能搭載のミニショベルで整地作業の自動化・高精度化を提案する。MG機に比べ価格は上がるものの、「走りながらブレードのコントロールができるため、運転だけに集中できる」(担当者)のが特徴だ。MG機を含め、さまざまな価格帯から商品を選べるようラインアップを拡充する。
24年には建設業にも働き方改革関連法が適用され、残業時間を月45時間までとする上限規制が課される。しかし建設業界の求職者は減少傾向が続き、離職率も他の産業に比べ高く、もともと人手不足が深刻化していた。今後は給与水準の引き上げはもちろん、担い手を増やすためにも、女性や高齢者でも作業できるような職場環境の改善が急務となっている。建機各社はICT化のニーズへの対応が求められそうだ。
【関連記事】 建機メーカーが大注目する異色のレンタル会社