野村證券×大分銀・福井銀…証券と地銀の提携が相次ぐ理由
証券会社と地方銀行の業務提携が広がっている。野村証券は今春から大分銀行、福井銀行と相次ぎ提携業務を開始し、大和証券も5月までに四国銀行と提携による口座移行を完了した。SBIホールディングス(HD)は島根銀行など9行と資本業務提携し、地銀連合を形成した。総合証券サービスを提供したい地銀と、地域の顧客基盤にリーチしたい証券会社の双方のニーズが合致していることが背景にある。(編集委員・川口哲郎)
野村証券は山陰合同銀行を皮切りに地銀4行と業務提携した。いずれも数十人単位で出向させ、証券のノウハウを結集している。地銀との協業の進捗(しんちょく)について、杉山剛専務は「ストック資産の積み上げは目覚ましい成果が上がっている」と評価する。野村HDの奥田健太郎グループ最高経営責任者(CEO)は「長く地域にコミットしていくことが提携の一番の課題であり、成功するポイントでもある」と指摘する。
SBIHDは地銀9行と資本業務提携し、システムの共有化などで経営効率化を図っている。北尾吉孝社長は「今後は9行との経験を踏まえ、資本関係の有無にかかわらず、全ての地域金融機関を対象にSBIグループと業務提携を強化する」とさらに陣容を拡大する構えだ。金融商品仲介業サービスは地域金融機関49社に提供し、新規の顧客開拓を支援している。福島銀行、島根銀行が採用を決めた次世代バンキングシステムは、「資本関係の有無によらず、2030年度までに地銀10行による採用を目指す」(北尾社長)という。
大和証券は四国銀行に60人を出向させ、今春から顧客の資産形成を支援する体制だ。同社は今後の地銀との提携拡大には慎重な姿勢だ。中田誠司社長は「やみくもに広げる考えはない。企業文化を理解し合える関係でなければ提携できない」と言い切る。すでに全国に店舗網を有するゆうちょ銀行とファンドラップの取り扱いで提携しており、地域展開は全体とのバランスの兼ね合いになる。
少子高齢化と人口減少が急速に進む中、地銀は預金や貸し出し事業だけで将来の展望を描きにくくなった。地域顧客に対する資産形成の支援がますます重要になっているが、「単独ではノウハウやツールの限界がある」(福井銀行の長谷川英一頭取)。証券会社としても地域の顧客基盤に手が届く利点は大きい。互いに補完し合える関係だが、提携の成否は顧客の評価にかかっており、地域にいかに役立てるかが問われる。
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