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出荷額3年ぶりに前年割れ…「電子部品」実需が失速した背景

電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本メーカーによる2022年度の電子部品世界出荷額は、前年度比0・3%減の4兆3693億円だった。各年度ごとに統計参加企業が異なるため単純比較はできないが、3年ぶりに前年度を下回った。スマートフォンやパソコンなど民生機器分野の客先で積み上がっていた電子部品在庫の消化が進み、実際の需要以上に出荷が減少。為替の円安による押し上げ効果を打ち消した。

受動部品のうち、自動車やスマホなどの中で電気を一時的に蓄えたり放出したりして、回路のノイズを除去し、電圧を安定させるコンデンサーは前年度比4%減の1兆4656億円。コンデンサーと組み合わせて用いられるインダクターも同2%減の3052億円だった。産業用ロボットなどで使われる接続部品のスイッチは同8%増の4181億円だったが、スマホや自動車で多用される変換部品のセンサーは同8%減の2421億円だった。一方、地域別で見ると、全体の3割以上を占める中国向けが同7%減の1兆4919億円と落ち込んだ。

中華系スマホやパソコン販売の落ち込みを背景に、電子部品の実需は22年度上期から失速。下期に入るとデータセンター(DC)やガソリン車といったインフラ分野にも調整が拡大した。スマホメーカーなどが積み増していた部品在庫の圧縮に動いた結果、下期の電子部品メーカーへの引き合いは実需以上に減った。上期は円安が電子部品の輸出額を円換算で押し上げたが、下期の出荷量の減少を補い切れなかった。

23年3月単月の世界出荷額は前年同月比8%減の3583億円。22年11月以降、前年割れが続いている。


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日刊工業新聞 2023年06月01日

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