ブラジル経済“長い冬”はいつ終わるか。五輪効果も期待薄、耐える日系企業
進むインフレ
2000年代後半の資源ブームの波に乗り、有望新興国の一つとされたブラジル。ブームの際は主に中国向けの鉄鉱石などの輸出が伸び、海外からの投資をひきつけ、消費も好調だった。しかし、足元は中国の経済減速に資源価格の下落が重なり、さらに米国の利上げでドル資金が流出。汚職疑惑に揺れる国内政治の混乱も拍車をかけ、通貨レアルは売られやすい展開が続く。
レアル安は輸入物価の上昇を通じてインフレを招き、15年のインフレ率は10・67%と、政府目標(6・5%)を大幅に上回った。本来なら景気後退で金利を引き下げる局面だが、インフレ抑制とレアル安を食い止めるため、政策金利は14%台で高止まりしている。
暗い話題が多い中、唯一の明るい材料である夏のリオデジャネイロ五輪も「盛り上がっているのはリオだけ。サンパウロ市民は冷ややか」(進出日系企業)と言われるように、14年のサッカーW杯に比べ経済効果は期待できない。
とはいえ、債務不履行(デフォルト)に陥るような危機的状況ではない。外貨準備高は輸入額の18・2カ月分(14年)と、リスクの目安である3カ月を大幅に上回る。今後、政治情勢の好転と資源価格の再上昇により、成長軌道に戻る可能性は十分ある。進出日系企業にとってはやや長めの”冬の時代“に、筋肉質な企業づくりを目指すしかない。
竹下幸治郎氏(ジェトロ海外調査部米州課長)「新たな種まきの時」
資源高や外国マネーの流入で経済の好循環にあったブラジルが一転、今度は負の循環に陥っている。だが、ブラジルは過去にも好不況のサイクルを繰り返しており、長年、進出している日系企業は備えができている。問題は5、6年前の資源ブームの時に進出した企業だ。不況への対応策を持ち合わせておらず、当機構にも困って相談に来ることがある。
助言できることは、次の”春“を見据え、今は耐えて新しい種まきをすることだ。例えばレアル安・ドル高のため現地の優良企業をドルで買収するには都合がよい。金利が高いため、預金などの資産を現地で積み増すと、日本よりも有利だ。16年は厳しいが、資源価格の反転などで17年にも経済は回復に向かうことが見込まれる。
日刊工業新聞2016年2月19日「深層断面」