産総研・美濃窯業が新風、断熱性と強度を両立させた「耐火断熱れんが」の衝撃度
産業技術総合研究所と美濃窯業は、断熱性と強度を両立させた耐火断熱れんがを開発し、ガス炉の燃料使用量を36%減らした。工業炉の省エネは持続可能な開発目標(SDGs)のエネルギー効率の向上や気候変動対策につながる。耐火れんが研究は歴史が長く成熟した分野だ。産学連携で新風を吹き込む。
「焼成炉に投入される熱エネルギーのうち製品の加熱に使われるのは約2%。98%が捨てられている」と産総研の福島学研究グループ長は指摘する。排ガスや断熱材の蓄熱、炉壁からの放熱で大部分の熱が失われる。断熱材の技術革新はインパクトが大きい。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」事業では産総研が技術限界の追究、美濃窯業が量産品の開発を分担した。
産総研はセラミックス粒子を分散させたゲルを凍結乾燥してから焼成し、気孔率98%の断熱材を実現した。耐火れんがの気孔率は約20%、耐火断熱れんがは30―40%程度だ。熱伝導性は10分の1程度になった。福島研究グループ長は「新手法を製鉄用など幅広く展開したい」と意気込む。
美濃窯業は新技術の量産化を進め、気孔率80―90%の断熱材を開発した。安価な原料と製造プロセスに切り替えて乾燥時間を半減させた。コストと圧縮強度と性能とを両立させた。重量は6割以上軽量化し省資源化した。小型ガス炉に適用すると燃料使用量を36%削減できた。
現在、2立方メートルの実証炉で最終性能を評価している。高効率熱交換器や高効率バーナーと組み合わせて省エネ効果を積み上げる。美濃窯業技術研究所の田中洋介氏は「社内外で稼働させ、長期信頼性を実証するのに2―3年かかる。勝負はここから」と気を引き締める。
2026年には排出量取引制度が本格稼働し、28年には炭素への賦課金としてのカーボンプライシングが導入される。省エネ炉の導入拡大は確実視される。脱炭素の需要をつかめるか注目される。