「郵政vsヤマト、佐川」宅配・メール便戦争の勝者は?

国内、不毛な消耗戦。海外大型M&Aに疑問の声も

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「佐川を買収してヤマトに対抗すべきだ」


 国土交通省が発表した2014年度の宅配便取り扱い実績(トラック便)は、前年度の消費増税前の駆け込み需要の影響でのネット通販のマイナスや各社の値上げが影響。前年度比0・7%減の35億7007万個と前年度実績割れとなった。

 この環境変化でヤマト運輸「宅急便」、佐川急便「飛脚宅配便」、日本郵便「ゆうパック」の上位3社に変化があった。首位のヤマトが前年度比2・6%減、佐川急便も前年度割れの同1・9%減。一方、日本郵便は急増するネット通販需要を取り込むため郵便ネットワークを活用した通販業者向けメール便「ゆうパケット」を14年6月に投入。同13・2%増と一人勝ちした。

 ヤマトのシェアは45・4%と前年度から0・9ポイントダウン。2位の佐川も33・5%と0・4ポイント減った一方、3位の日本郵便はシェアを13・6%に伸ばした。

 西室泰三日本郵政社長は14年9月、「日本郵便を立て直す原資」としてゆうちょ銀行から1兆3000億円の資本を調達した。「この資金で佐川を買収してヤマトに対抗すべきだ」。関係者からこんな声が上がった。

 大口荷主向けが強い佐川は不採算だったアマゾンとの取引を停止するなど「量から質」への転換を図っている。日本郵便と佐川は公社時代からメール便の配達受託などで協力関係にあり、量を追い、個人向けが中心のゆうパックとのシナジーが期待できた。

豊作貧乏の国内市場で戦っても先がない


 しかし、関係者にある「悪夢」が頭をよぎった。10年7月1日、当時の郵便事業会社(現日本郵便)は日本通運の旧「ペリカン便」を吸収、新「ゆうパック」を立ち上げた。

 当時のペリカン便と合わせたシェアは12・7%。しかし、寄り合い所帯での現場の混乱でスタート早々、34万個を超える遅配を出した。郵便事業会社の10年9月中間決算は統合に伴う損失や大量遅延問題などで営業利益ベースで928億円の赤字を計上。現在もその後遺症に苦しみ赤字を出し続けている。

 当時の「負のシナジー」を知る高橋亨日本郵便社長と西室氏が下した判断は、豪物流大手・トール社のM&Aだった。「豊作貧乏の国内市場で戦っても先がない。国際物流ビッグスリーに挑戦するには今しかない」。

 日本郵便の売上高は1兆8500億円で世界8位。トールとの合併で約2兆7000億円となり、ドイツポスト&DHL、米国郵便公社、米フェデックス、米UPSに続く5位グループに躍り出る。

 しかし、6200億円の巨費を投じた投資に社内からも疑問の声が上がる。郵便事業と、大企業向け国際物流企業とのシナジーは果たしてあるのだろうか。

※日刊工業新聞では毎週水曜日に「郵政上場の衝撃」を連載中

日刊工業新聞2016年2月10日/17日金融

COMMENT

高屋優理
編集局第二産業部
記者

信書の最大の問題は、何が信書で何が信書でないのか、非常にわかりにくいという点です。あいまいな基準の中で、信書を日本郵便以外の事業者を利用して送ってしまうと、私たち一般消費者が郵便法違反で刑罰を受ける可能性があります。ただの民業圧迫として、ヤマトホールディングス固有の経営問題と勘違いされることが多く、あまり大きな問題にならないのですが、社会問題の一つだと思いますし、この話を聞く度に、こんな訳の分からない制度が現代に残っているなんて、タイムマシーンに乗ったような、不思議な気持ちになります。

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