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建機で進む電動化、欠点クリアした「電動ローラー」は普及するか

酒井重工業がコンセプトモデル製作
建機で進む電動化、欠点クリアした「電動ローラー」は普及するか

電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデル

酒井重工業は電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデルを製作した。ホンダの着脱式可搬バッテリーの搭載により、電動機の弱点である充電時間や稼働時間の欠点をクリアした。環境・エネルギー関連や建設関連の展示会に同機を出展し、顧客の反応を探る。建設機械で油圧ショベルに続き、道路工事用ローラーの分野でも電動化が進んできた。(編集委員・嶋田歩)

ハンドガイドローラーは手押し型の小型締固め機械。酒井重工業の電動コンセプトモデルの寸法は幅695ミリ×長さ2450ミリ×高さ1175ミリメートル、重量は605キログラムで現行のディーゼル機種「HV620」と同等だ。

電動のため稼働中に排ガスを出さず、騒音も小さいため住宅地や夜間でも作業しやすい。燃料やオイルフィルターの交換が不要なためメンテナンスも容易。手元の振動がないためオペレーターの疲労も減らせる。

動力源はホンダ製の着脱式バッテリーと電動パワーユニットを搭載した。建機は一般乗用車より重量が大きくパワーも必要なため、並のリチウムイオン電池(LiB)では短時間でパワーがなくなってしまう。工事現場では付近に充電ステーションがないケースも想定され、長時間の作業は困難だ。着脱式バッテリーは、こうした課題を解決できる。

酒井重工業はこれに加え、バッテリー劣化時のリサイクル性と開発時のスピードを考慮したとしている。ホンダは国内企業のため輸入禁止などの地政学的リスクがなく、供給の安全性を確保できるほか、トラブル時のサービスやメンテナンス対応も容易だ。

15日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる「国際スマートグリッドEXPO」、5月24日から幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれる「CSPI―EXPO建設・測量生産性向上展」に同コンセプトモデルを出品する。

建機業界ではコマツがホンダの着脱式バッテリーを搭載した電動マイクロショベルの国内レンタル販売を22年3月に開始。15日からの国際スマートグリッドEXPOには、参考出展の形で一回り大きい機種を紹介する。

電動式はディーゼル式より価格が2―4倍と高価なのが難点だ。しかし欧州では導入に向けた補助金政策などが始まっており、カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の命題達成に向けて行政が普及を支援する体制を鮮明にしている。米国や中国なども電動化建機の研究が進む。都市部や住宅地の工事を中心に顧客が電動機の長所をどう受け入れるか、行政がどう後押しするかが注目される。

日刊工業新聞 2023年03月15日

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