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からくり機械のよう…“映える”「クレープ生地焼きロボット」開発の裏側

からくり機械のよう…“映える”「クレープ生地焼きロボット」開発の裏側

「クレープロボットQ」の小型版。機体手前の所定の位置に皿を置くと、機体奥の鉄板に生地ダネが注がれ、調理が始まる

モリロボ(浜松市中区、森啓史社長)は、直径20センチメートルのクレープ生地を自動で焼くロボットを開発した。同社が飲食店などに販売している従来のロボットは同40センチメートルの生地の焼き上げに対応しており、ホテルのビュッフェでの利用を想定して小型化した。消費税抜きの価格は180万円。年間20台の販売を目指す。

自社商品「クレープロボットQ」の小型版として市場投入する。ビュッフェの利用客が機体手前の所定の位置に皿を置くと、機体奥の鉄板の上に液体状の生地ダネが自動で注がれる。鉄板を回転させながらローラーで生地ダネを円形状に伸ばし、約1分間かけて生地を焼き上げる。焼き上がった生地は鉄板から自動で剝がされ、搬送装置に載せられて、最初に機体手前に置いた皿の上に運ばれてくる仕組みだ。

鉄板の温度は最高180度C。生地の厚さは0・8ミリ―1・5ミリメートルの範囲で調整可能で、「パリパリ」「もちもち」といった食感も調整できる。「簡単操作のためトレーニングが不要で、焼き上がりの品質も均一になる」と森社長は説明。外食現場の人手不足の課題解決につながるとみる。

従来品のクレープロボットQが大手回転すしチェーンの店頭で活躍する様子をテレビの情報番組で見た関係者から「ホテルのビュッフェ向けに小型版を作れないか」との要望がモリロボに寄せられたのが開発のきっかけだ。装置の寸法(参考値)は幅310ミリ×奥行き625ミリ×高さ440ミリメートルと卓上サイズに抑えた。

ホテルのスタッフは同ロボットに生地ダネを補充するだけで済むため、省人化に寄与する。また、利用客がロボットに皿を載せるだけで約1分後には焼き上がった生地が自動で運ばれてくるため、利用客とホテルスタッフとの間は基本的に非接触。「感染症対策としても役立つ」と森社長は利点を強調する。

皿を置くと鉄板に生地ダネが投下され、ローラーで丸く伸ばして均一の厚さに焼き上げ、手元の皿に運ばれてくる一連の工程は、さながら「からくり機械」のよう。森社長は「難しい技術は極力使用せず、子どもが見て、楽しめるようにすることも意識した」と開発の裏側を明かす。

現在は、同ロボットで焼き上げた生地に、生クリームを自動で盛り付ける装置の試作も進めている。ビュッフェの「映え」も意識しつつ、ユニークな自動化装置で現場の課題解決に貢献する構えだ。

日刊工業新聞 2023年02月22日

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