育休3カ月は給与100%支給する医薬品メーカーの考え
米メルク日本法人のMSD(東京都千代田区)には、最長3カ月間、会社が休業前給与を100%支給する育児休業(育休)制度がある。国も2022年10月から「産後パパ育休」を施行するなど父親の育児参加を促すが、同社はその1年前に、男性社員にも使いやすい制度を導入した。
21年の全国の父親の平均育休取得率が約14%に対し、MSDは79%と高い。人事部門の松岡裕一郎グループディレクターは「男性社員の育休取得は当たり前になったが、以前はその期間が短かった」と話す。制度の拡充により、22年の取得日数は従来の平均10日前後から同30日程度に増え、手応えを感じている。
社員の声を受け、始めた「分割取得」や「休業中の就業」の試みも後押しした。「育休中の“ちょこっと勤務”など柔軟に働ける仕組みが受け入れられた」(松岡氏)という。
さらに特徴的なのが、婚姻や血縁関係によらず、広くパートナーの子に対して取得できる点だ。18年に「パートナー登録制度」を設けており、事実婚や同性のパートナーも「配偶者」とみなす。
製薬業界では社員の多くを営業職の医薬情報担当者(MR)が占め、その大半が男性だ。職種柄、長時間労働になりやすく、育児との両立が難しい面があるが、「育休は男性も取得できるはず」と松岡氏は力を込める。
同社は介護支援や休暇制度も充実しているが、育休も含めて「プライベートの安定が仕事上の余裕や向上心の醸成につながる」との考えがあるためだ。現場の一時的な人員減は、業務の見直しなどにもつながる。育休取得がキャリアに響くことは一切なく、「むしろ育児を経験することの価値の方が高い」と松岡氏。社員の人生を満たしつつ、その能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指す。
日刊工業新聞 2023年01月24日