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今切った電話の相手、未来の顧客だったかも?

小さなものづくり企業の営業改革大作戦 #3
今切った電話の相手、未来の顧客だったかも?

アイキャッチイラスト:石山さやか(@shiya07)

貴社の代表電話は、誰が取っているだろうか? 中小製造業なら、女性の事務員さん、社長の奥さん、営業担当さんなどが多いだろうか? 社長が自ら電話対応をしている会社もあることだろう。
筆者はものづくりライターという仕事柄、取材のお願いやお客様からのご紹介などで製造業の会社に電話をかける機会が多い。そして電話したときに頻繁に受けるのが、次のような電話応対だ。

「□□工業です」
「はじめまして。ものづくりライターの新開と申します。」
「は?」
「○○製作所の○○社長のご紹介でご連絡させていただきました。□□社長はいらっしゃいますでしょうか?」
「はぁ? 社長はいません(ガチャ)」

たとえ事前にメールや紹介者を通じて社長と話ができていたとしても、電話で話そうとすると社長にお取り次ぎいただくまでにとてつもない時間がかかり、いつも心が折れそうになる。
 このような経験をしているのは私だけではなく、調査会社の調査員や製造業の業界新聞社や雑誌編集部、そして加工パートナーを探しているメーカー社員までもが同様の経験をしているそうだ。ということは私が特別に嫌われているというわけではなく、製造業の業界全体で似たような対応が一般的になっているのだと思われる。問題は、このような事象が日常的に発生していることをきっと社長や経営陣はご存じないということだ。

電話応対が雑だと仕事も雑なのでは?(byメーカー調達担当)

さて、知らない人には冷たく当たる女性従業員さんも、旧知の既存客からの電話には愛想良く応答していることだろう。電話を取る立場からすれば、毎日営業電話がものすごく多く、いちいち対応していられないのもわかる。そして、社長のお客様だと思って取り次いだら「営業電話をいちいち取り次ぐな」と怒られたこともあるかもしれない。しかし、電話をかけてくる知らない人の中に未来の重要顧客が混ざっている可能性があるから、電話応対はあなどれない。新規の外注先を探していた装置メーカーの調達担当者が「電話応対があまりに雑だと仕事も雑なのでは? と思ってしまうので、たぶん発注することはない」と教えてくれたこともある。
 事務員さんがガチャ切りした相手が、新規の仕事を頼もうとしている未来のお客様だったらどうだろうか? 想像するだけで恐ろしい。ぜひ一度、会社の電話応対を見直してみてほしい。

電話応対もブランディングのうち

『小さなものづくり企業の営業改革大作戦』の本誌では、愛知県の話し声のボイストレーナー、奥村まみ子さんに「感じのいい電話応対のコツ」を教えていただいている。
 たとえば飲食店であれば、高級レストランと激安居酒屋では電話応対が違って当然だ。高級レストランで「ご予約は何名様ですか?」と聞かれれば、こちらもちょっと背筋を伸ばして「○名で伺います」と丁寧に答えたくなる。製造業でも同じで、丁寧な仕事・付加価値の高い精密加工を売りにしている会社が激安居酒屋のような安っぽい電話応対をしていると、これまで培ってきたイメージとの乖離で違和感が出てしまうことだろう。
 「会社のブランディングは、電話応対から始まっていますよ。貴社はどんな雰囲気の会社だと思われたいですか? ぜひイメージを統一してくださいね」(奥村さん)
 本誌では奥村さんが教えてくれた「すぐに実践できるコツ」をいくつか紹介しているので、気になる読者はぜひご確認を。

[取材協力]
VoiP ボイップ
話し声のボイストレーナー
奥村まみ子さん
「伝える」ために必要な「声」と「プレゼン」についてスクール、セミナー、研修形式で講座を開催し、延べ2000講座を実施。「伝える」ことが楽しくなるためのメソッドを伝えている。社内研修にも対応可能。
ウェブサイト: https://www.voip-school.jp/

【POINT】
電話は未来の顧客の
ファーストコンタクトかも?

貴社の営業力の現在地がわかる簡単なチャートを用意してみた。ぜひ試してみてほしい。
【中小製造業向け】営業の現在地確認チャート

<著者紹介>
ものづくりライター 新開 潤子
『小さなものづくり企業の営業改革大作戦(日刊工業新聞社)』の著者であるものづくりライター。中小製造業を中心に取材活動を行いながら、「ものづくり企業の商売繁盛を全力で応援するサポーター」として経営計画、営業の仕組み導入などのコンサルティングを行っている。
(オフィス・キートス 代表 https://office-kiitos.biz/

小さな製造業の営業は「売り込む」ではなく「売れる仕組みを作る」が正解だった――激変する経営環境の中で「営業なんてしたことない」「営業マンがいない」というものづくり企業のための、ひとりからできる「営業」の打ち手集。

書名:小さなものづくり企業の営業改革大作戦
著者名:新開潤子
判型:B5判
総頁数:104頁
税込み価格: 2,035円
<販売サイト>
Nikkan Book Store
Amazon
楽天ブックス

特集・連載情報

小さなものづくり企業の営業改革大作戦
小さなものづくり企業の営業改革大作戦
製造業の営業の現場で実践して新規顧客、売上を獲得してきた具体的な方法の中から町工場がすぐに取り組める内容を取り上げ、ひとりから始められる「売れる仕組み作り」の記事を連載でお届けする。

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