残業時間570時間短縮、オフィス器具メーカーが導入したロボットの活躍
金剛(熊本市西区、田中稔彦社長)は、図書館などで使用される移動式の棚やオフィス器具のメーカー。2016年の熊本地震で本社工場が被災し、嘉島工場(熊本県嘉島町)を18年に新設した。同工場では生産ラインに導入したロボットが生産効率アップに活躍。生産管理部門で進めるデジタル変革(DX)との相乗効果の創出も目指す。一層の自動化に向け、協働ロボットや無人搬送車(AGV)の導入も検討する。 (九州中央・片山亮輔)
嘉島工場は移動棚などを生産する。金剛では嘉島工場の建設前から自動化の機運が高まっており、計画が決まってその動きは加速した。被災から短期間での建設だっため検討期間は短かったが、現在までに曲げ加工や溶接部門に多関節ロボット計10台を導入。塗装工程にも一部ロボットを取り入れ生産ラインの自動化を進めた。
その結果、導入前の18年と導入後の19年の半期を比べると、残業時間を570時間ほど短縮することに成功した。
山下暁工場長は「ロボットを導入することで生産計画を立てやすくなり、社員の作業負荷軽減や省人化、品質の安定化につながった」と効果を実感する。ロボットの中には曲げ角度を自動で調整する機能を備えた機種や、カメラを使って画像処理を行い、複数の加工対象物(ワーク)を自動で連続加工できる機種もある。
省人化した工程に従事していた人員は、OEM(相手先ブランド)や設計部門などの新分野に配置することで工場全体の生産力が高まった。開発部門に製造現場の知識がある社員を配置しやすくなり、ラインでの生産歩留まり改善が期待できる。
ロボットを活用するラインの構築で難しかったのが、現場ごとのロボット導入に関するヒアリングと、ロボットシステムと生産管理を連携させるという2テーマ。「各部署によって要望が異なり、すり合わせに苦労した」と、山下工場長は導入計画を進めた当時を振り返る。
結果的に、複数のロボットを組み合わせた生産システムの構築につなげた。これは社内にシステム設計に精通する人材がいたからこそ可能だった。一方、ロボットに動きを教え込むティーチングができる人材の育成が今後の課題だ。
生産機能だけではなく、材料購入といった事務作業プロセスにおいてもデータ連携を進め、作業時間の短縮を達成。工場全体でのデジタル変革(DX)も実績を積み上げている。
浜田洋至製造本部長は工場内の自動化について手応えを感じつつも「工場内の自動化については当初計画の半分ほど」とさらなる改善を追求する構えだ。
今後は生産拡大や効率アップに向けて24時間稼働できる体制を整えるため、22年末に協働ロボットの導入を予定する。組み立て作業の自動化や夜間の生産体制構築にも取り組む計画だ。AGVを活用してワークの搬送を自動化することも検討している。