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若手研究者発のロボットに出会える!「Robotics×Future 2016」

3月18日、ベルサール汐留(主催:科学技術振興機構)
若手研究者発のロボットに出会える!「Robotics×Future 2016」

人と球体自律走行ロボット群の協調パフォーマンスシステムの開発


 これはJSTが平成24年から推進している「研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)」(※)の一環だが、学生を主体にした研究開発支援事業はJSTでもあまり例がないという。同事業のプログラムオフィサーを務める国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所ネットワークロボット研究室長の宮下敬宏氏、JST産学連携展開部 START事業グループ中西もも氏に話を伺った。

ユーザーニーズ取り込むにはヒューマンネットが不可欠


――今回、ロボティクス分野にフォーカスして学生の起業を支援していますね。
宮下 この事業では「ロボティクス」を広義にとらえています。「コントローラ、アクチュエータ、センサがネットワークでつながっている」ものをロボットと捉え、この中の少なくともどれか一つの要素が入っているモノを対象にしています。
 なぜこんなに幅広くしているかというと、日本のロボット研究者や技術者は少し視野が狭いのではないかと感じていて、ロボティクスを学ぶ学生も就職はメーカーに、という流れが一般的。ですが世界的にはベンチャーが新しい技術を取り入れた製品やサービスを次々と立ち上げています。産業用ロボットの分野では日本の企業が強いですが、逆にベンチャー企業は少ない。ロボティクス分野は、新技術開発がかなりのスピードで進められていて、研究開発から実用化までの期間も比較的短いものが多いです。短期間で研究開発し、製品化するというベンチャーのスピード感に合っていると思います。ただ、ロボットに関わっている人たちが起業しようという考えに至っていないように思うのです。
 
 研究者の立場としては、自らが研究開発しているモノが社会でどう生かされるのかというサービスの部分まで考え、製品化して試し、その結果をまた研究開発に反映させるサイクルを体験することが重要だと感じています。そうすれば「自分たちの作った製品が世の中を変えることができる」というビジョンを持てるようになるので、研究開発がどんどん楽しくなってくるんです。この事業を通して、ロボティクス分野の研究者・技術者のみなさんにそういった体験をしてほしい、というのが私の願いです。

――事業化に苦労しているスタートアップや研究者も多いと思いますが、どういった点がポイントになってきますか。
宮下 短期間での研究開発とリリースを繰り返し、ユーザーニーズや意見を取り込んで少しずつ変化させていく、いわゆる「ピボット」を繰りかえすことです。しかし、ピボットを繰り返し、ユーザーニーズを取り込んだビジネスを構築していくには、研究者や技術者以外のヒューマンネットが不可欠で、これは学生や若手研究者だけでは構築が難しい部分です。
 本事業ではメンター制度を導入していて、メンター自身だけでなくメンターが持っているヒューマンネットも活用してもらうことを狙っています。
中西 月に一回メンターとのミーティングを開いているチームもあります。ユーザー視点に立てているか、コストの面を意識しているかなどのアドバイスをしています。

実現したいサービスを考え、プロダクトをつくり込む


――チームが展示会に向けて苦労していた点はどのようなところですか。
宮下 今回採択されているチームの研究開発は、多くの場合、学生がチームリーダーになって進められています。「やりたい」という意思はとても強いのですが、ほとんどプロジェクトマネジメントをしたことがない人たちなんですね。そのサポートをJSTで行っていきました。
 チームのメンターに相談するのも気が引けてしまうなど、技術系の学生や若手の研究者にはとにかくシャイな人が多いのですが、人と関わらなければプロジェクトは進められないんです。ここでそういった経験を重ねていくことで、アントレプレナーシップが培われればと思っています。

――近年、ロボットに関する世間の注目がかなり高まっていますね。
宮下 注意したいのが、「どんなロボットを作るか」から考えると出口が見えなくなってしまうということ。今回の事業ではどのようなサービスを実現するのか、ということに注力して考え、そこからプロダクトをつくり込んでいきました。確実にサービスとして成り立つものにフォーカスすることで、実現可能性の高いビジネスモデルが見えてきます。

――展示会の見どころは。
中西 研究開発の試作を展示することで、来場者の方に実物を見せながら直接PRできるという点が一番の魅力です。
また、各チームがプレゼンテーションをするのですが、技術的な内容より、「どのように役立つのか」という面を一番に伝えるように準備しています。展示に関しても、学会発表のようにならないように、一般の人でもわかりやすく楽しめるようなブース作りやデモンストレーションを心がけています。
宮下 各チームのみなさんには、「関西で言うところの『しゅっ』とした展示にしてね」と伝えています(笑)お客さんの新しい発見につながるように取り組んでいますので、単純な技術展示には絶対になりませんよ。

※平成24年度、文部科学省により大学発新産業創出拠点プロジェクトとして創設。平成27年度よりJSTに移管。

展示会の詳細はこちら
http://www.jst.go.jp/start/event/roboticsxfuture2016.html
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