次世代太陽電池「ペロブスカイト」円筒形を開発、電通大が狙う効果
シリコンと異なり軽く柔らかい魅力から、研究開発が進むペロブスカイト太陽電池。劣化防止に他材料で挟んだ板状が多い。これに対して電気通信大学のグループは、シートを丸めてガラス管に入れ、完全封止した円筒形で取り組む。建物リフォームでの設置に向き、壊れても取り換えが容易で、従来と異なる使い方の実証試験を進めている。(編集委員・山本佳世子)
1メートル四方のパネルに円筒形ガラス管が20本、同じ幅の隙間を空けて並ぶ。管の中にはペロブスカイト太陽電池のシートが丸められて入っている。これを建物の壁などに設置すると、ガラス管の曲面で太陽光を受けるため、朝夕や季節で日射角度が異なっても発電能力はさほど変わらないという。すだれのように隙間を風が通り抜けるため、頑丈な施工も必要ない。
ガラス管の並びに沿ってクローラー状に動かせ、丸めることもできる。災害時に避難所へ運び込むといった可搬性が魅力だ。技術ポイントは、水や酸素に弱い太陽電池を守るため、蛍光灯のように管を完全封止する点だ。壊れたら1本、まさに蛍光灯のように入れ替える―。
電気通信大学のi―パワードエネルギー・システム研究センターが産学連携で取り組むのはこんなユニークな太陽電池だ。パートナーはフジコー(北九州市戸畑区)、CKD、ウシオ電機などだ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトでは円筒を数百本、ビニールハウスの上に並べた実証試験を手がける。野菜の生育と発電と、太陽の恵みを分け合う“ソーラーシェアリング”だ。「田舎ではこの形で、都会なら高層ビル壁面で―とそれぞれの展開が可能だ」と早瀬修二特任教授は説明する。
同大地元の東京都調布市もアイデアを練る。高齢者や障害者も楽しめるeスポーツの拠点を、市内に構築する時のエネルギー供給源がその一つ。街中イベントの臨時発電ステーションの案もある。
普及しているシリコン太陽電池は堅くて重く、設置は新築のビルや家屋など限定される。これに対して結晶構造の名称を冠したペロブスカイト太陽電池は、有機材料ゆえ塗布や印刷技術で量産でき、軽量で低コスト。耐久性向上にむけプラスチックフィルムで挟むが、長期間の屋外使用に耐えられるか微妙だ。円筒形システムはこの点で優位だ。
「デバイスからシステム、建築など多様な段階でビジネスチャンスがある。リフォームなら地場の工務店も活躍する」と、横川慎二教授は実用化に向け、多様な協力者との関係構築に動いている。
科学技術振興機構(JST)の支援事業では発電効率を高めたり、環境に影響する鉛の使用を減らしたりする材料研究がテーマ。電通大はスズを使い、鉛なし材料で世界トップクラスの成果を上げている。基礎研究から社会実装まで、電通大は全体をまとめるハブとしての存在感を示している。