DXで素材業の未来はどう変わるか、AGC副社長に聞いた!
ガラスを祖業とし、電子部材やライフサイエンスなど多角化を進めるAGC。人材育成に力を入れ、国内外でデータサイエンティスト研修を行う。もともと研究所にコンピューターの専門家がおり、デジタル変革(DX)教育は「比較的スムーズに進んだ」と語る副社長の宮地伸二最高財務責任者(CFO)に聞く。(藤木信穂)
―デジタル時代の人材育成のあり方は。
「デジタルに強い人を外から呼んできても会社はあまり変わらない。業務を良く知る人がデータ解析スキルを学ぶことで“二刀流人財”を育てる。2025年までに上級データサイエンティストを100人、その基礎・応用を身につけた人材を5000人にする。研究所で高度なシミュレーションを手がけてきたことが生きている」
―DXによって何を目指しますか。
「DXはビジネスモデルの大革新ととらえられがちだが、素材業ではそれは難しい。人工知能(AI)を活用するにしても元のデータが重要だ。生産設備のデジタル化を進め、そこで蓄積されたデータをAIに導入する。こうした“道具”によりオペレーショナル・エクセレンス(業務の卓越性)を追求する」
―「結合」が重要とも指摘しています。
「これまで開発や製造など個々に進化してきたことが、デジタルによってどんどんつながっている。さらには社内の枠を超え、サプライヤーや顧客、社会ともつながることでイノベーション(新結合)が起きる。それがDXの本質だ。サプライチェーン改革は今後より加速するだろう」
―環境対応もサプライチェーン全体で取り組む流れですね。
「いずれ二酸化炭素(CO2)排出量の少ない製品の方が顧客に評価され、そのような競争になっていく。したがって自社だけでなくサプライチェーンの中で最適化し、さらに安全保障や人権問題の上でも安全である必要がある。デジタルで結合し、これらを可能にするサプライチェーン同士の戦いになる」
―DXで変わる素材業の未来は。
「DXで変化は起きるが会社には目指す姿があり、デジタルはその道具に過ぎない。開発から製造までシミュレーションでできても、モノを作って確認する最後の作業は残る。高機能な製品でどのように作っているかは分からない。こうしたプロセスのブラックボックス化が可能になれば製造業は強い。デジタルを生かしつつモノづくりのノウハウで差別化し、勝負していく方向は変わらない」