ソニーグループが開発、「世界最小パルスレーザー」が持つ可能性
ソニーグループは世界最小の高ピーク出力パルスレーザーを開発した。ピーク出力は57キロワット。共振器の体積は1立方ミリメートル以下で固体レーザーの1000分の1以下になり、直径9ミリメートルのCANパッケージに実装できる。励起用とパルス発生用の共振器が重なり合う独自の新構造。半導体生産プロセスで量産でき、生産コストの大幅な削減が見込める。自動車用レーザースキャナー(LiDAR)や産業用レーザーなど既存の高出力レーザーを置き換えられる可能性がある。
パルス幅は450ピコ秒(ピコは1兆分の1)で、熱影響を抑えた高精度な金属加工などが可能になる。ピーク波長は1030ナノメートル(ナノは10億分の1)。半導体材料の変更や変換用結晶により用途に応じた波長を出せる。LiDAR、大気観測用センサー、医療用レーザー、工作機械用レーザーなど、固体レーザーやファイバーレーザーが担う広い用途に対し、大幅な低コスト化と小型化を提案できる。量産時の品質や信頼性を検証し、数年後の実用化を目指す。
ガリウムヒ素(GaAs)基板上に化合物半導体層を形成し、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)結晶を積層する。励起用とパルス発生用の共振器を重ね合わせることで、従来の固体レーザーに必要な集光レンズなどを含む励起用レーザーの機能を素子の中に作り込んだ。生産には独自のノウハウがあるが、一般的な半導体用の生産設備やプロセスの組み合わせで実現できるという。
半導体レーザーは小型で安価だが、実用レベルの出力は100ワット程度にとどまる。一方、固体レーザーは1キロワットを超える高出力を出せるが、レンズで集光した半導体レーザーの光で励起するため、装置構造が複雑で製造に手作業が増え、価格が高くなり、体積も大きくなる。LiDARや大気観測用など、数百メートルから数十キロメートルの長距離にレーザーを届かせるには高出力が必要だが、大量に生産し、使うのに大きさやコストが課題となっている。
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