トヨタのレクサス「RX」開発者が明かす、新型で挑戦した変革の全容
レクサスインターナショナル製品企画チーフエンジニア・大野貴明氏が語る
「RX」はレクサスブランドをけん引するモデル。レクサス販売台数のうち約3割を占める人気車種だ。5代目となる新型は守りに入らず変革に挑戦した。企画初期に豊田章男社長と方向性を相談した。その際「小手先ではだめ。失敗しても良いからちゃんとやりなさい」という言葉を受け、はっとさせられた記憶がある。挑戦する車でなければ、お客さまから求められない。
運転者と対話できる車、走って楽しい車を目指した。プラットフォーム(車台)は大型の「GA―K」をベースにしながら、リア周りは新設計にした。リアにレクサスで初めて電動駆動装置「eアクスル」を搭載し、高出力モーターに耐えられるサスペンションが必要だったためだ。フロントはモーターと自動変速機(AT)を組み合わせ、力強い走りのハイブリッド車(HV)を実現した。
車の前方に高トルクエンジン、後方に高出力のモーターを設置し、4輪駆動力システム「ダイレクト4」で駆動力を緻密に制御する。路面や走行状態を問わず気持ちの良い走りを体感できる。eアクスルという電気自動車(EV)で活用するような将来の電動化技術を使いながらも、グローバルでご愛好頂けるHVに仕上げた。
音作りにもこだわった。エンジン音など車から発する素の音を磨きながらもノイズを低減し、会話をしているような、操っているような感覚を体現。車を単なる走る道具にはしたくなかった。
デザインの変革にも取り組んだ。外装は走りを予感させる低重心で踏ん張り感を表現。室内装飾は人が馬を操る際に使う「手綱」に着想を得て、視線移動や複雑なスイッチ操作をせず運転に集中できるレイアウトを作り上げた。後席でもフロントシートバックを薄型化することで膝前空間を拡大するなど、快適な居住空間に磨きをかけた。細部にこだわりRXらしさを追求した。
【記者の目/自らの殻を破る変革の車種】
7年ぶりの全面改良により走行性と上質感を高め、競争が激しいスポーツ多目的車(SUV)市場で存在感を示す。課題は半導体など部品不足への対応。顧客の需要にあった供給量を確保できるかがカギとなる。レクサスとして2車種目となるプラグインハイブリッド車(PHV)モデル「450h+」も用意するなど、時代の要求に応えながら自らの殻を破る変革の車種となる。(名古屋・川口拓洋)
【関連記事】 トヨタの世界戦略を支える強力な「日独連合企業」