導入増える「週休3日制」、先駆け・メタウォーターが推進する“その先”の働き方改革
人材獲得・雇用維持狙い
週休3日制を導入する企業が増えている。日立製作所やパナソニックホールディングス(HD)といった大手企業をはじめ、専業大手などあらゆる企業・業種で採用を検討する動きが広がっている。休日が増えてメリットがありそうだが、課題もある。先駆けて2019年に本格導入した水処理大手のメタウォーターは現在、週3休制だけに頼らない働き方改革を推進する。
メタウォーターの週休3日制は所属長に相談して許可をもらうと、土日以外の休日を自由に選べる。所定の総労働時間を維持するため、休日分の労働時間を出勤日に振り分けるルールだ。
18年に試験導入し、19年から本格運用した。社員2000人のうち1割が実践し、増えた休日を育児や帰省、ボランティア活動に活用した。ただし、休んだ日の労働時間を出勤日に分配するため10時間労働の日が多くなり、平日の体力面やプライベートに支障が出た。藤井泉智夫取締役は「週休3日制は社員の多様な価値観に応える強力な武器だが、弱点があった」と振り返る。
そこで20年度、賃金を維持したまま1日の所定労働時間を7時間45分から7時間15分に短縮した。週休3日を取得しても出勤日は9時間労働に収まるようになった。
しかし現在、週休3日の利用者は減っている。テレワークが定着したためだ。テレワークだと自宅で8時に仕事を始めると、16時には終えて育児や保育園の送迎ができる。7時を始業にすると15時に終業するので、夕方の自由時間が大幅に増える。副業や私生活を充実できるので、週休3日制の必要性が薄れた。「通勤時間のないテレワークの良さが勝った」(藤井取締役)という。
ただ、週休3日のニーズがなくなったわけではない。親の介護や地域活動への参加などで活用する社員がいる。働き方の選択肢の一つとなったが、「1日を有効に使えるのでもっとニーズがあるはずだ」(同)と強調する。特に人材教育への活用余地があるとみている。教育機関の社会人向け講座は土日や平日夜の開講がほとんど。平日の日中にも講義があれば社員は週休3日制を使って通え、土日にしっかりと休息できる。社会の環境整備が必要だが、週休3日制を社員のスキルアップにも生かせる可能性を感じている。
同社はほかにも、失効する有給休暇を100日まで残せるようにし、単身赴任も解除した。さらに勤務地の自由化も進めており、東京にある本社の所属でも実家のある大阪で生活する社員がいる。次々と施策を打つ背景に人材難がある。上下水事業大手の同社でも人材獲得は厳しく「魅力を感じてもらわないと、就職の選択肢にならない」と危機感を持つ。働き方に柔軟性を持たせた成果が出ており、経験者を獲得できるようになった。
週休3日制を導入する他社も、人材獲得や雇用維持が狙いだ。ほかにも時間当たりの生産性向上も目的となる。23年1月から導入予定のアミタホールディングス(HD)は社員の生活の充実を目指す。
メタウォーターの事例から週休3日制以外にも働き方の選択肢を用意することが有効と言えそうだ。藤井取締役は「公平性を考え、全社員一律の制度を追求しては進まない。職場ごとの働き方があるはずだし、一人ひとりのニーズに合わせた制度が必要」と、選択肢を増やすポイントを助言する。