出口見えぬ「東芝再編」、株式非公開化交渉の行方
東芝の株式非公開化を含む経営戦略の検討は、まだ出口が見えない。10月に優先交渉権を得た投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)は、20社程度の国内企業の出資と銀行の融資を合わせて、2兆2000億から2兆4000億円で東芝を買収する提案を進めている。ただ、東芝が16日に公開したオープンレターでは、パートナー候補との間で「合意に達することを確約できる状況にない」としており、交渉は2023年に持ち越される見通しだ。
株式非公開化の流れは、3月の臨時株主総会で会社分割案が否決されてから加速した。臨時総会を前に就任した東芝の島田太郎社長も自社の事業を分割せず、デジタルデータの活用を軸に成長を目指す方針を打ち出し、6月の定時株主総会で株主の信任を得た。
一方、定時総会では物言う株主(アクティビスト)の投資ファンドから新たに2人の幹部が取締役に加わり、取締役12人のうち6人がファンド関係者となったため、「従来以上に経営戦略検討への投資ファンドの影響力が増した」(関係者)との見方もある。
優先交渉権を持つJIPの買収案には中部電力、オリックス、日本生命保険、ローム、ゆうちょ銀行などが出資を表明または検討している。原子力事業を持つ東芝を日本企業連合が買収することで、ハードルとなる改正外為法の審査には有利に働くとみられる。ただ、東芝の事業に関わろうとする出資企業が増えると買収後の経営に混乱が生じることが懸念される。買収額が物言う株主に受け入れられるかも不透明だ。
東芝買収には官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)と米ベインキャピタルも名乗りを上げており、JIPに対抗する提案がなされることも想定されるなど、交渉の行方はいまだ見通すことができない。
東芝は安定した株主構成の下で、一日も早く成長戦略を実行に移すことが重要。さらなる交渉の長期化は避けたいところだ。
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