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人工知能ロボットの進化は二者択一ではない!

世界で侃々諤々、ロボットの未来は明るい?人間とのつながりで素早くアクションを
人工知能ロボットの進化は二者択一ではない!

GEは写真のような飛行ロボット型検査システムを開発中(GEグローバル・リサーチ)


共同作業ロボットに高い思考能力を与えるべきでない


 一方で、共同作業ロボットには高い思考能力を与えるべきでないという方針の研究者もいる。プラスワン・ロボティクスの創設者でCEOのエリック・ニーブス氏は、思考能力を制限したマシンと監督する人間の組み合わせによって効率的に作業する、人間中心のロボット戦略をとる。

 ニーブス氏の考え方では、ロボットは人間の能力を補足し拡大する手段でしかなく、彼のアプローチでは、ロボットに完全な形のメンタル・ステートはインストールしない。

必要なのは“賢い人間とつながった”ロボット


 「AIロボットが出現するのは何十年も先のことですが、もっと充実したコラボレーションは今すぐスタート可能です。今以上に賢いロボットは必要ありません。必要なのは“賢い人間とつながった”ロボットです。目指すのは人間の代役でも複製でもなく、それによって人間を方程式から排除することでもありません。必要なのは、人間の有効性を拡大するロボットなのです」(ニーブス氏)

 ニーブス氏は、自身の例を挙げる。テキサス州に住み、オハイオ州で働いている彼は、引っ越しや単身赴任をせず、「テレプレゼンス・ロボット」を使って仕事をしている。自宅からロボットを操り、ライブ・ビデオ・ストリーム画面に彼の顔を映し出したロボットが会議に参加し、工場内を動き回る。

 ロボットに取り付けられたカメラは、その動きに合わせてオフィス内の様子をニーブス氏に伝える。「必要なのは物理的存在としての私ではなく、問題をリアルタイムで解決するための私の専門的知識です。ロボットは遠い場所にいて私の能力を補助してくれているだけ。そこに実用に耐えるレベルの賢さは必要ありません」とニーブス氏は説明する。

 もちろん、未来はこの二者択一ではない。必要な仕事を成し遂げるために、多様な能力を持つ複数のロボットをどこに配備するかー。その答えには多様な組合せが存在するだろう。いずれにせよ、アルゴリズムやハードウェアの開発、構築に携わる人たちは、ロボットがどのように人間の仕事をスマートに支援してくれるか、生活をより良いものにしてくれるかを考えるのは楽しいと言う。

今後3ー4年でソフトウェアがソフトウェアを書く


 GEのソフトウェア研究担当バイスプレジデントであるコリン・パリス氏は「ロボットの知能は向上しており、ロボット同士のつながり、ロボットと人間とのつながりはますます強固になっています。今後3ー4年で、ソフトウェアがソフトウェアを書くようになり、5ー8年で今ある産業のいくつもがロボットに置き変わり完全に崩壊するでしょう」とみる。

 こうした流れを認め、ロボット活用について先回りして考え 素早くアクションを講じた者が大きなチャンスを得る(あるいは損失を最小化する)ことになるのは間違いない。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ロボットを「道具」として捉えるか人格のようなものを持った「パートナー」と して捉えるかはロボット研究者の中でも立場が違います。産業ロボやシステム屋さんは前者、コミュニケーションロボットの研究者は後者を目指しています。どちらが正しいとかはないのですが、ロボット研究にはブームがあってだいたい後者よりの先生が人間を超える?などと期待を煽って予算が付くと前者寄りの先生が火消しして現実路線に落ち着くのことが多いです。ロボット自体はブームを経て一歩一歩進化しています。現在の「学習」への期待は高く、日本も世界に追いつかないととは思うのですが、学習の途中で出てくるAIの「勘違い」を誰が教えて正すのかと思います。google検索が成功例ですが、これは技術よりサービス設計がうまかった。 (日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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