新型コロナウイルスが免疫に耐性を持つよう変異する仕組み、総合研究大が解明
総合研究大学院大学の佐々木顕教授らは、新型コロナウイルスが既存の流行株やワクチンなどで作られた免疫に耐性を持つよう変異する仕組みを解明した。免疫の低下でウイルスを体内から排除できずウイルスを体内で長期的に作り続ける「免疫不全宿主」に着目。免疫不全宿主を含む集団でのウイルスの進化を解析した。免疫不全宿主がいると集団内でウイルスの変異が起きやすくなり、感染拡大につながる可能性がある。
成果は英王立学会誌に掲載された。
ウイルスの各変異株の流行動態と、抗原に変異を蓄積することで宿主の免疫から逃れるような変異株を生み出す進化動態を組み合わせたモデルを解析。免疫不全宿主と通常の免疫を持つ宿主が混在する集団を想定して分析した。通常の免疫を持つ宿主に比べ、変異株の流行初期に免疫不全宿主が集団内でウイルスを多くの宿主に感染させ蓄積する変異が増加し、ウイルスの進化を促進。
免疫不全宿主の割合が低いほど、免疫不全宿主によって抗原変異の速度が上がることが分かった。
免疫不全宿主に対し優先的にケアすることは、免疫不全の宿主を守るだけでなく集団全体をウイルス感染から守ることにつながる。少数の免疫不全宿主への感染を防ぐ対策が病原体ウイルスの進化を抑え、感染拡大を防ぐ最適な手法であることを示した。
日刊工業新聞 2022年11月28日