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「燃料電池車が主要ゼロエミッション車技術になると考えていない」

アナリストが見通すモビリティのミライ #07・ライフサイクル・アセスメント
世界のモビリティー産業がカーボンニュートラル達成に向けてアクセルを踏んでいる。しかし、エネルギー不足や半導体の供給不安などを背景に市場の見通しを見極めることは難しい。そこで、モビリティー産業の動向を調査するS&P Global mobilityのアナリストたちに未来を見通す上で持つべき視点などを語ってもらう。

自動車業界の脱炭素はエネルギー製造時を含むライフサイクル全体で考える必要がある。ライフサイクル面における電気自動車の優位性などについてS&P グローバル・モビリティーアナリストのビジャイ・スブラマニアン氏に聞いた。

―日本は電気自動車の動力である電力を生み出すために現状は化石燃料を必要としています。
 日本の電力グリッドは石炭火力発電が一定数を占め、欧州や米国市場と比較するとバッテリー電気自動車(BEV)のライフサイクルCO2排出量が高くなる。2020年代の日本の発電は、依然として石炭と天然ガスに大きく依存することになると予測される。これは、欧州連合(EU)と比較すると、日本の電力グリッドにおいては炭素の排出量が比較的高く、脱炭素化のペースが遅くなることを意味する。

ビジャイ・スブラマニアン氏

―環境対応車としてはハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などがありますが、それぞれ優位性は。
 脱炭素化にはBEVやHEV、PHEV、FCEVなど、すべての車両技術オプションを駆使したCO2削減が重要になる。ただ、その中で、HEVやPHEVといった他の車両と比較すると、BEVは、ライフサイクルでより低いCO2排出量の実用的なオプションと考えられる。

-水素燃料車(FCEV)の競争力はどのように見ていますか。
 世界的に見て、ライトビークル分野でFCEVが(BEVを超える)主要ゼロエミッション車技術になると我々は考えていない。ただ、日本や韓国のように、インフラネットワークがより発達し、より強力な政策推進力やグリーン水素戦略、研究開発能力を備えた地域であれば、水素は、カーボンニュートラルの道筋において重要な役割を果たすことができるだろう。

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アナリストが見通すモビリティのミライ
世界のモビリティー産業がカーボンニュートラル達成に向けてアクセルを踏んでいます。しかし、エネルギー不足や半導体の供給不安などを背景に市場の見通しを見極めることは難しくなっています。そこで、モビリティー産業の動向を調査するS&P Global mobilityのアナリストたちに未来を見通す上で持つべき視点などを語ってもらいました。

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