研究者の流出防止の一助に、最新の研究を金融で支援
国立大学への運営費交付金や私立大学への補助金が減少傾向だ。これらは大学の研究基盤などの整備に充てられる「基盤的経費」と呼ばれる。
競争的資金の重点化などの影響で、文部科学省の資料によると2018年度の「国立大学法人運営費交付金等」は14年前と比べて1445億円減の1兆971億円、「私立大学等経常費補助金」は同109億円減の3154億円だった。大学側からは「研究基盤の装置の更新がままならない」という声も上がる。
課題/大学への「基盤的経費」減
国立大学への運営費交付金や私立大学への補助金が減少傾向だ。これらは大学の研究基盤などの整備に充てられる「基盤的経費」と呼ばれる。
競争的資金の重点化などの影響で、文部科学省の資料によると2018年度の「国立大学法人運営費交付金等」は14年前と比べて1445億円減の1兆971億円、「私立大学等経常費補助金」は同109億円減の3154億円だった。大学側からは「研究基盤の装置の更新がままならない」という声も上がる。
オリックス・レンテック(東京都品川区、細川展久社長)がレンタル提供した、物資を原子レベルで解析する最先端の顕微鏡「クライオ電子顕微鏡」が6月に東北大学で公開された。同顕微鏡はたんぱく質などを瞬間的に凍結させることで、構造を保ったまま観察できる。東北大は24年に運用開始を目指す次世代放射光施設と同顕微鏡を一体で利用して、ナノからミクロレベルまで、あらゆる物質を可視化できる環境を整える。
高価な顕微鏡だが、「レンタルの仕組みで残価を設定することで、全体として安くなった」とオリックス・レンテックの営業推進本部の新井耕分析・医療機器営業部長は話す。レンタル期間は5年間で、月額のレンタル料は715万円だ。
今回は「Lレンタル」というスキームを使った。レンタル契約が満了する時の機器の市場価値を査定し、残存価値の算出をする。物件価格よりも低いレンタル料総額で利用者に最新装置を提供できる。またリースでは対応できない期間を設定でき、中途解約も可能だ。同社が保有する在庫機器から選ぶ一般レンタルとは異なり、利用者の希望する製品をメーカーや代理店から購入して提供する。
さらに大学にとっては装置の陳腐化を防げる。限られた予算で最先端の機器を導入できる利点もある。今回、東北大は同顕微鏡を学内外で共用する。
近年、海外研究機関への“頭脳流出”が課題となっている。国内大学は財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)化が指摘される中、研究者は研究設備が整った海外の大学に移籍したりする動きがある。
今回のように最新の装置で最新の研究ができるような仕組みを金融サイドで支援できれば、研究者の流出を防ぐ一助にもなりそうだ。大学で従来、財政的に諦めていた高額な設備や装置を導入できる可能性が広がる。「レンタルをうまく活用することを提案し、国内の基礎研究のお手伝いをしていきたい」と新井部長は力を込める。