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守りに強いが攻めに弱い銀行。フィンテックへ「中抜き」の危機感

顧客データの解析力、非対面融資が競争力を左右
 ITと金融の技術融合を指す「フィンテック」。日本でも浸透した感はあるが、明確な定義はまだない。資産管理ソフトからスマートフォンを活用した決済、ロボットの投資指南、暗号通貨まで。既存サービスを支えるものから金融インフラに変革を起こすものまで。市場への浸透度も既存の金融機関への影響もさまざまだ。2016年の動向を占う。

 「モールを立ち上げて運営してもらえないか」。ある地方銀行の幹部はIT企業に自行の取引先企業を対象にしたオンラインモールの構想を打診した。顧客企業が楽天やヤフーの物販サイトでの販売を拡大しており、自行が「中抜き」される危機を募らせているからだ。

 フィンテック旋風が巻きこる中、金融に革命を起こす本命といわれるのが決済分野だ。 インターネットショッピングの普及に伴い米アマゾンなどのEC業者は自ら決済業務を手がけることで、購買履歴など顧客データを集積。マーケティングの「宝の山」を有効活用すれば、効果的な投融資につなげられる。すでに日本でもヤフー、楽天はサイトの出店企業向けに小口融資業務を始めている。

 2016年はこうしたネットを活用したリテールの融資業務は決して業界の傍流にはとどまらない存在感を発揮しそうだ。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は「2016年以降はデータ分析を活用した非対面のファイナンス(クラウドファンディングなどの小口融資)が事業として本格的に出てくるだろう」と潮流を読む。
 

店舗戦略や融資形態に変革


 非対面の小口融資は店舗や人員を維持する必要がない。クラウドファンディングでは、従来の銀行融資の対象になりにくい案件に資金調達の機会を与えることにもなる。ネット経由で膨大なデータを集積でき、融資効率や精度も飛躍的に高まる可能性もある。業界の店舗戦略や融資形態に変革をもたらすのは間違いない。

 新たな時代の足音が大きくなるが、フィンテック時代に競争力を左右するのはデータの解析力だ。りそなホールディングスの東和浩社長は「(2016年は)データベースマーケティングが重要になる」と説く。
 
 「例えば、今まで銀行は車を買うと意思決定した消費者にサービスを提供してきた。これからは購買行動を予測して、先回りして情報を提供することで取引につなげなければいけない」と語る。IT企業と分析手法のノウハウを蓄積しており、16年は地域限定で実証実験を予定する。

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日刊工業新聞2016年1月28日金融面一部修正加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
人工知能や電子決済、クラウドファンディングから顧客対応のロボット、スマートフォンのアプリまで「フィンテック」と一括りにされていたのが2015年のフィンテックを取り巻く現実でした。具体的なイメージを思い浮かべられるようなサービスが生まれなければ、フィンテックが定着したとはいえないでしょう。今年は定着の試金石になるのでは。

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