ニュースイッチ

生態系保護で防災、損保ジャパンが大分・中津の干潟保全活動を支援

生態系保護で防災、損保ジャパンが大分・中津の干潟保全活動を支援

大分県中津市の干潟。カブトガニが産卵する

損害保険ジャパンは防災機能を持った生態系の保護活動を支援する。第1弾の支援先として大分県中津市の干潟を保全するNPOを選んだ。同社は自然環境を守る市民活動を資金支援している。生物多様性の向上や防災、気候変動対策、経済振興など多面的にも貢献する自然保護が国内外で提唱されており、支援の目的を防災にも広げる。

損保ジャパンは日本NPOセンター(東京都千代田区)などと連携し、2011年度から市民活動を支援する「SEVEJAPANプロジェクト」を展開してきた。保険加入時の約款の電子化で削減できた費用として年間8000万―1億円を拠出し、これまでに357の環境団体を支援した。また、保護した希少種は299種にも上る。

自然環境に興味を持つ市民を増やすことを狙いとしてきたが、防災や減災にも貢献する生態系保護もプロジェクトの目的に加える。中津市ではコンクリート護岸の整備中に一部だけ干潟が残った海岸がある。絶滅危惧種のカブトガニの産卵が確認されており、現地NPOの「水辺に遊ぶ会」や「おおいたNPOデザインセンター」などが守ってきた。

干潟は波を弱める機能があり、高潮から住民を守る。損保ジャパンから支援を受けたNPOは8日、自然観察会を開き、干潟が生物の生息地としてだけでなく、防災にも役立つことを市民に伝える。

生態系を活用した防災・減災は「ECO―DRR」と呼ばれ、環境省が推進している。また、気候変動対策や社会課題解決にも自然の機能を生かす「グリーンインフラ」や「ネイチャーベースドソリューション(NbS)」といった概念も登場し、国内外で複数の価値を生み出す自然保護が求められている。

日刊工業新聞2022年10月7日

編集部のおすすめ