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「空飛ぶクルマ」商用化へ、スカイドライブCTOが語る開発の課題

街中で離発着・整備視野
「空飛ぶクルマ」商用化へ、スカイドライブCTOが語る開発の課題

スカイドライブが発表した新機体「SD―05」(同社提供)

大阪・関西万博が開幕する2025年の事業化を目指し、空飛ぶクルマ(eVTOL)の開発を進めるSkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市、福沢知浩社長)。9月までに13社から総額96億円を調達し、商用化予定の新機体を発表するなど話題を集めた。開発の課題や今後の展望について、岸信夫最高技術責任者(CTO)に聞いた。

―開発で苦労している点は。

「機体の重量を抑えることや、パートナー企業とのスケジュール・コスト調整、それに型式証明だ。eVTOLについてはまだ航空法が制定されていないため、(規制を)一緒に作っていく必要があり、その調整もある」

―技術面の課題は。

「飛行機は主翼が機体の重量を支えるため、効率良く遠くまで飛べる。一方、当社のeVTOLはマルチローター方式で12枚のプロペラが重量を分担するため、ホバリング(空中停止)するだけでかなりバッテリーを使う。それでもこの方式を選ぶのは、構造がシンプルで開発や整備にかかる費用が安くすむためだ。将来はガソリンスタンドやコンビニエンスストアで離発着や整備ができるようにしたい」

―重さや騒音はヘリコプターの3分の1を目指しています。

「重量が軽ければ、今あるビルの強度でも離発着できる可能性がある。またヘリの場合はすり鉢状に離発着する規定があるが、それでは(ビルの密集する)街中に降りられない。(真上から)円筒形に降りることができれば選択肢が広がるため、そうした規制も含め調整の必要がある」

―25年の事業化に向け生産体制はどのように整えますか。

「量産品を高い品質で安く作れるノウハウは自動車会社が持っている。(資金調達した)スズキとも協議を重ねており、(生産委託も)視野に入れている。ただ、25年の国内生産時には生産台数は数十台、あるいはもっと少ないかもしれず、どこで作るかは未定だ。台数に応じどこで作るのが一番適切か、生産方法を含め話し合いを進めている」

【記者の目/空飛ぶクルマ実現へ調整具体化】

9月下旬に行われたスカイドライブの新機体発表イベントには大阪府の吉村洋文知事が駆けつけるなど、社会の関心の高さがうかがえた。13社との協業も始まり、充電方法の検討や量産、保険商品の開発など、実用化に向けた調整が具体化する。遠い未来にも思えた空飛ぶクルマの実現は、万博まで3年を切り現実味を帯びてきた。(大阪・大川藍)

日刊工業新聞2022年10月3日

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