エンビジョンが欧米でリチウム電池の電極を生産する狙い
エンビジョンAESC(神奈川県座間市、松本昌一最高経営責任者〈CEO〉)は、欧米で車載用リチウムイオン電池(LiB)の電極の生産に乗り出す。2025年までに英国、米国、フランス、スペインで新設する電池工場に電極の生産ラインも導入する。電極はこれまで日本で生産し、欧米の電池工場に輸出していた。電極を含め一貫して生産する体制を現地で構築。電池部品の調達も含め現地供給体制の強化を図る各国の政策にも対応する。
エンビジョンAESCは英国サンダーランド、米国ケンタッキー州、フランスのドゥエー、スペインのエストレマドゥーラ州で、車載電池の新工場建設に取り組む。各工場にリチウムイオン電池の正極と負極用のロールを、材料の混合から塗布、プレス工程まで一貫して手がける生産ラインを導入する。
欧米では現在、英国サンダーランドと米国テネシー州で車載電池を生産するが、電極用のロールは相模原事業所(相模原市中央区)で製造して輸出している。
米国ではバイデン政権がEVの税額控除を受ける要件に車両や電池部品の北米での生産を求める方針を示している。電池サプライチェーン(供給網)の戦略的な構築が求められる中、同社は各新工場に電極の生産を含めた最新設備を導入してコスト競争力を高めるほか、各国で異なる政策や電池需要にも柔軟に対応する。
一方、エンビジョンAESCは次世代技術「ドライ電極」の開発にも取り組む。ドライ電極は現状の電極生産工程と比べ長さが数十メートルにもなる乾燥炉が不要になり、生産設備の導入スペース、設備投資、生産性の大幅な効率化が期待される。
同社は24年の量産開始に向け茨城県茨城町でも車載電池の新工場を建設している。マザー拠点と位置づける同工場への導入に向け、ドライ電極技術の開発を加速している。また欧米で建設中の新工場でも同技術を活用した生産設備の導入を見込み、世界で競争力の向上につなげる。
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