「アナとジャルの社長」 Let it go!
ニッポンのエアライン、顧客満足と収益力で競う合う
**日本航空・植木義晴社長
―原油安が航空会社の追い風になっていますが、16年の市場環境の見通しは。
「経営破たん以降、ハード、ソフト、ヒューマンと鍛えてきて、それがようやく浸透し、そこに原油安や訪日外国人が追い風になった。その一方で、パリの同時多発テロの影響で1月から成田―パリ線を運休するなど不安要素もある。中国もこれまでビザ緩和が奏功して伸びてきたが、むしろそれは特殊要因で、同じ水準がずっと続くわけではないと考えている」
―国際線では15年に成田―ダラス線などを就航しましたが、16年の計画は。
「新規路線は何地点か考えていて、16年の就航に向けて絞り込んでいるところ。ここ数年、輸送力を表すASK(有効座席キロ)において、前年比3%増で路線を拡大してきたが、16年も同じ規模で、数路線増やすことになる」
―国内線は新幹線の開業が続き、競争が激化しています。
「羽田―小松線については、1日6往復体制を16年も維持する方針をすでに示していて、新たな運賃施策も発表している。石川県や福井県と協力して航空の利用をアピールしながら、路線を維持していきたい」
「北海道新幹線は影響が全くないわけではないが、所要時間からみても航空の優位性は高い。今のところ函館線の減便などは考えていない」
―MRJの納入が遅れる見通しとなっていますが、機材計画への影響はありますか。
「MRJは21年から導入の予定なので、今のところ大きな変更はないと考えている。飛行機の設計が難しいのは十分理解しており、それを織り込んで機材計画を立てているので、心配はしていない」
―16年は中期経営計画の最終年度となりますが、目標達成の手応えは。
「営業利益率10%以上と16年度末自己資本比率50%以上の目標は余裕をもってクリアしたい。経営破たん前のJALは、3カ年の中計を出しても翌年に変えるというのを繰り返してきた。中計を完遂するのは初めてになるので、何としても達成したい」
【記者の目・顧客満足度向上に尽力】
中計では財務以外に安全運航の堅持と顧客満足No1を掲げており、中でも顧客満足度はサービス産業生産性協議会(JCSI)の調査で1位となることを目標にしている。破たん以降、順位を上げてきたが、15年度は国内線で若干後退。植木社長も「財務より顧客満足度の方がよっぽど難しい」と、手こずっている様子。初めて完遂する中計の目標達成は、顧客満足の向上にかかっている。
(聞き手=高屋優理)
―2015年はブリュッセル線やバンクーバー線など成田を中心に国際線の新規路線を広げましたが、16年の戦略は。
「羽田の国際線発着枠が拡大した14年が羽田イヤーだとすると、15年は成田イヤーだった。15年は原油安が追い風となったが、16年もこの基調は続くとみており、国際線で成長するという戦略に変わりはない。16年は米ボーイング787―9型機を12機受領するが、機材の導入に合わせ、輸送力を表すASK(有効座席キロ)で前年比10―15%増を目安に増便する」
―787―9をどのように活用しますか。
「新規路線は15年と同様、日本を中心として、各方面にらせん状に張っていく。787―9は燃費も良く経済性が高いので、戦略的機材として、東南アジアなど中距離路線に投入していく予定だ。中距離路線のビジネスクラスにもフルフラットシートを導入するなど、さらなる品質の向上につなげる」
―中国経済の減速が航空事業に及ぼす影響を、どのようにみていますか。
「素材などの分野では影響が出ているようだが、リテールやサービスなどの産業は好調だ。15年度上期の中国人の旅客数は前年同期比で80%増と伸びていて、航空需要には影響がない。中国線は15年に羽田から各社が増便しているため、需給が緩む可能性もあるが、引き続き堅調に推移すると期待している」
―国内線についてはいかがでしょうか。
「15年は北陸新幹線の開業で富山線や小松線の機材を縮小した。16年はブームも一段落するだろうが、収支は厳しい状態が続いているので、減便も含めて検討はしている。国内線全体のASKは前年比1%減と、生産量を若干落とす見通しだ」
―国内線の収益向上に向けた戦略は。
「国内線では小型の737―800型機を5機、欧エアバス321型機を4機導入し、需給に合わせた機材運用『ピタッとフリート』を16年からスタート。日別、便別に需給に適した機材を使うことで、全体の座席供給量は減らしても利用率を上げ、収益性を高めたいと考えている」
【記者の目・IoTの活用に注目】
ANAは事業拡大に加え、年間250億円程度のコスト削減を継続してきた。今後の方針について片野坂社長は「これからは雑巾を絞るようなコスト削減でなく、IoTなどを生かし、生産性向上などを進めていきたい」と話す。航空の分野でIoTをどう活用するのか、ANAの取り組みが注目される。
(聞き手=高屋優理)
―原油安が航空会社の追い風になっていますが、16年の市場環境の見通しは。
「経営破たん以降、ハード、ソフト、ヒューマンと鍛えてきて、それがようやく浸透し、そこに原油安や訪日外国人が追い風になった。その一方で、パリの同時多発テロの影響で1月から成田―パリ線を運休するなど不安要素もある。中国もこれまでビザ緩和が奏功して伸びてきたが、むしろそれは特殊要因で、同じ水準がずっと続くわけではないと考えている」
―国際線では15年に成田―ダラス線などを就航しましたが、16年の計画は。
「新規路線は何地点か考えていて、16年の就航に向けて絞り込んでいるところ。ここ数年、輸送力を表すASK(有効座席キロ)において、前年比3%増で路線を拡大してきたが、16年も同じ規模で、数路線増やすことになる」
―国内線は新幹線の開業が続き、競争が激化しています。
「羽田―小松線については、1日6往復体制を16年も維持する方針をすでに示していて、新たな運賃施策も発表している。石川県や福井県と協力して航空の利用をアピールしながら、路線を維持していきたい」
「北海道新幹線は影響が全くないわけではないが、所要時間からみても航空の優位性は高い。今のところ函館線の減便などは考えていない」
―MRJの納入が遅れる見通しとなっていますが、機材計画への影響はありますか。
「MRJは21年から導入の予定なので、今のところ大きな変更はないと考えている。飛行機の設計が難しいのは十分理解しており、それを織り込んで機材計画を立てているので、心配はしていない」
―16年は中期経営計画の最終年度となりますが、目標達成の手応えは。
「営業利益率10%以上と16年度末自己資本比率50%以上の目標は余裕をもってクリアしたい。経営破たん前のJALは、3カ年の中計を出しても翌年に変えるというのを繰り返してきた。中計を完遂するのは初めてになるので、何としても達成したい」
【記者の目・顧客満足度向上に尽力】
中計では財務以外に安全運航の堅持と顧客満足No1を掲げており、中でも顧客満足度はサービス産業生産性協議会(JCSI)の調査で1位となることを目標にしている。破たん以降、順位を上げてきたが、15年度は国内線で若干後退。植木社長も「財務より顧客満足度の方がよっぽど難しい」と、手こずっている様子。初めて完遂する中計の目標達成は、顧客満足の向上にかかっている。
(聞き手=高屋優理)
ANAホールディングス・片野坂真哉社長
―2015年はブリュッセル線やバンクーバー線など成田を中心に国際線の新規路線を広げましたが、16年の戦略は。
「羽田の国際線発着枠が拡大した14年が羽田イヤーだとすると、15年は成田イヤーだった。15年は原油安が追い風となったが、16年もこの基調は続くとみており、国際線で成長するという戦略に変わりはない。16年は米ボーイング787―9型機を12機受領するが、機材の導入に合わせ、輸送力を表すASK(有効座席キロ)で前年比10―15%増を目安に増便する」
―787―9をどのように活用しますか。
「新規路線は15年と同様、日本を中心として、各方面にらせん状に張っていく。787―9は燃費も良く経済性が高いので、戦略的機材として、東南アジアなど中距離路線に投入していく予定だ。中距離路線のビジネスクラスにもフルフラットシートを導入するなど、さらなる品質の向上につなげる」
―中国経済の減速が航空事業に及ぼす影響を、どのようにみていますか。
「素材などの分野では影響が出ているようだが、リテールやサービスなどの産業は好調だ。15年度上期の中国人の旅客数は前年同期比で80%増と伸びていて、航空需要には影響がない。中国線は15年に羽田から各社が増便しているため、需給が緩む可能性もあるが、引き続き堅調に推移すると期待している」
―国内線についてはいかがでしょうか。
「15年は北陸新幹線の開業で富山線や小松線の機材を縮小した。16年はブームも一段落するだろうが、収支は厳しい状態が続いているので、減便も含めて検討はしている。国内線全体のASKは前年比1%減と、生産量を若干落とす見通しだ」
―国内線の収益向上に向けた戦略は。
「国内線では小型の737―800型機を5機、欧エアバス321型機を4機導入し、需給に合わせた機材運用『ピタッとフリート』を16年からスタート。日別、便別に需給に適した機材を使うことで、全体の座席供給量は減らしても利用率を上げ、収益性を高めたいと考えている」
【記者の目・IoTの活用に注目】
ANAは事業拡大に加え、年間250億円程度のコスト削減を継続してきた。今後の方針について片野坂社長は「これからは雑巾を絞るようなコスト削減でなく、IoTなどを生かし、生産性向上などを進めていきたい」と話す。航空の分野でIoTをどう活用するのか、ANAの取り組みが注目される。
(聞き手=高屋優理)
日刊工業新聞2016年1月20日生活面