再エネ拡大へ投資促す、新たな託送料金制度の全容
再生可能エネルギーの導入拡大や災害対応などに必要な送配電網の整備を確実に行うため、政府は2023年度から新たな託送料金制度であるレベニューキャップ制度を導入する。一般送配電事業者に対し5年間に必要な設備投資などの事業計画を提出させ、審査を経て託送料金の収入上限を決定する。総括原価方式に変わる制度だが送配電事業者はほぼノーリスクで必要な投資ができる。
半面、投資額は最終的に電気料金に上乗せされ国民負担が増える懸念もある。
脱炭素化に向け再生エネを増やすには、系統を太くし発電事業者の希望に応じて接続する必要がある。また需給逼迫(ひっぱく)時の電力融通対応や、高度成長期に大量導入された老朽設備の更新も課題だ。国は脱炭素化のために電化を推進するが、人口減少や省エネの進展で今後、電力需要が伸びる要素はない。こうした中で送配電事業者が安心して必要な設備投資を実行できるよう考えられたのが、欧州を参考にしたレベニューキャップ制度だ。
事業者は国の広域系統整備方針であるマスタープランに基づいて事業計画を策定し費用見積もりを申請する。ただし、事業目標の中で停電対応など安定供給、再生エネ導入拡大のための早期・着実な系統連系、サービスレベルの向上の項目については達成状況に応じてボーナスやペナルティーを設けた。決定した計画から事業者が独自にコストを削減した部分は、小売り事業者と折半で利益として計上できるため効率化のインセンティブが働く。また、天災など事業者が予見できない費用については、期中か次の5年間の計画に制御不能費用として反映される仕組みも設けた。
国はマスタープランで広域連系線などに3兆8000億―4兆8000億円の投資が必要と試算、この一部を託送料金でまかなう考えだ。ただ鉄塔など老朽設備の更新も必要だ。設備投資が増加した高度成長期には1954年からの8年間に東京電力管内で電気料金が約25%値上げされた。また先行してこの制度を導入している英国では、8年の期間でスタートしたが7、8年目に費用が上振れしたという。
一般送配電事業者10社で組織する送配電網協議会の前田圭ネットワーク企画部部長は「国の指針に基づいて事業計画を出すが、上がる要素はある」と小売り側に負担が生じる可能性を示唆する。
月内にも5年分の計画を提出し、約半年の審査を経て決定する。今後の再生エネの導入拡大だけでなくレジリエンスや電気料金など国民への影響も大きいことから、国は事業計画に対してどのように審査したのかを明白にし、無駄のない事業にする必要がある。