全階層に「ジョブ型人材マネジメント」を導入した富士通、「適所適材」に変革できるか
富士通は、「ジョブ型人材マネジメント」に基づく人事・人材管理の新施策を全階層に導入した。2020年から幹部社員に順次適用し、4月に国内グループの一般社員4万5000人へ拡大した。具体的には手上げ方式の「ポスティング」に加え、職責に基づく報酬体系「FUJITSUレベル」や国内外共通の評価制度「コネクト」を全社展開することで、従業員の主体的なキャリア形成と成長を後押しする。
ジョブ型人材マネジメントは採用やスキル教育などの人材管理を網羅し、「社内外の多才な人材が迅速に集い、やりがいをもって働ける企業への変革」(藤槻智博Employee Success本部マネージャー)を目標としている。
カギとなるのは「適材適所」から「適所適材」への変革。従来は終身・長期雇用を前提に、会社主導で配置転換や昇格を行い、現有人材を起点にビジョンや戦略を決めていた。
新施策では発想を逆転し、最初に事業戦略を描き、遂行する組織や人材像を考え、さらに仕事の責任範囲や期待する貢献などを「職務記述書」として定義した上で人材を配置したり、外部から登用したりする。これにより「一人ひとりが自らのキャリアを考え、主体的に行動するキャリアオーナーシップへの意識改革を促す」(藤槻マネージャー)。ポスティング制では、各部門の募集に対して、自ら手を上げて合格し、より責任の大きな仕事につくと処遇が上がる。新任幹部社員への登用で募集したところ、21年1―12月実績で2252の募集ポジションに対して合格者が前年比12倍の1192人となった。
FUJITSUレベルなどを一般社員にも適用することで、各施策の相互作用が強まり、ジョブ型人材マネジメントの全社展開が加速する見通しだ。
日刊工業新聞2022年5月10日