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「道は長い」…株式市場が注目する三菱自動車の復配の時期

「道は長い」…株式市場が注目する三菱自動車の復配の時期

加藤 隆雄社長

三菱自動車の復配の時期に株式市場が注目している。同社が最後に配当を実施したのは2020年3月期。ただ、連結当期損益は前期の黒字から257億円の赤字に転落。従前の拡大路線が仇となり、同社の固定費が増大した。さらに新型コロナウイルス感染症拡大も追い打ちとなり、販売台数が大きく落ち込んだ。構造改革費用なども影響して、21年3月期は3123億円の赤字で、無配となった。

上場している以上、無配の企業には投資家から厳しい目が向けられる。配当の議論では連結だけでなく、単体決算も注目だ。配当の実施には、原資となる単体業績の利益剰余金を十分に確保する必要があるからだ。

三菱自の単体決算の利益剰余金は19年3月期に1006億円まで積み増した。しかし20年3月期には638億円に目減り。21年3月期には当期損益が2734億円の赤字だったことで、利益剰余金は2095億円のマイナス(欠損)となった。22年3月期の配当も前期に続き、無配を予定する。

復配まで「道は長い」と話すのは岡三証券の成瀬伸弥アナリスト。「24年3月期まで配当はゼロだと見ている」という。三菱自の22年3月期予想では連結当期損益が500億円の黒字に転換するも、単体の利益剰余金をプラスに持っていき、復配を達成するには時間を要しそうだ。

自動車業界では足元、半導体などといった部品不足が影を落とす。ただ三菱自が主力市場と位置づける東南アジア地域はコロナ禍の移動制限が緩和され、販売台数は回復基調に転じている。構造改革も進捗(しんちょく)し増益効果を生んでいる。

三菱自は新型車のラインアップを充実させて、収益の向上につなげていきたい考えだ。同社は日産自動車と軽自動車の電気自動車(EV)を共同開発しており、22年度の初頭に発売する予定だ。しかし軽EVはどれだけ国内市場で受け入れられるかは未知数でもある。復配と合わせて、投資家に対する説得力のある成長戦略の提示も求められる。

日刊工業新聞2022年4月21日

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