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海外主体のコンビニ事業に傾注、セブン&アイHDの事業再編にくすぶる火種

セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、海外を主体としたコンビニエンスストア事業への傾注を鮮明にしている。傘下のそごう・西武を売却し、百貨店事業から撤退。好調な北米コンビニ事業をはじめ海外に成長の軸足を移す。アクティビスト(物言う株主)の存在によって加速した事業再編。アクティビストの要求は、そごう・西武だけでなく、コンビニ以外の非中核事業を対象にしており、事業再編の火種はくすぶり続けている。

2月、米アクティビストのバリューアクト・キャピタルはセブン&アイHDに送った提案書を公開した。主な提案の一つが「そごう・西武の売却」。アクティビストは時に、経営体制の刷新や過度な株主還元などで強硬姿勢を見せる。今回の提案が、そごう・西武の売却を強く後押ししたのは間違いない。さらに「取締役会の過半数を社外取締役にする」という提案も実現する運びだ。

26日開催の定時株主総会を踏まえ、取締役の過半数を社外取締役にする体制に変更する。その狙いについて、丸山好道取締役常務執行役員は「今後の戦略的な取り組みを誤りなく進めるには、さまざまな文化的な背景を持った方たちがボードの中で議論を交わすことが重要だと考えている」と説明する。主張は理解できるが、実施の時期だけをみればアクティビストの要求を受け入れた格好だ。

再編の今後の争点はイトーヨーカ堂。祖業についてもバリューアクトは売却を提案。これに対し、井阪隆一社長は「イトーヨーカ堂を中心としたスーパーストア事業とセブン―イレブンが同一グループにあることこそ、グループの将来の成長に資すると確信している」と強調した。

イトーヨーカ堂については2022年度中に構造改革を完遂し、再成長を果たす戦略を描いている。ただ改革の成果が出なければアクティビストの圧力が強まるのは必至。祖業を円滑に継続できるかどうかは早期での業績回復にかかっている。

日刊工業新聞2022年5月5日

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