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鋳造業界に新風を吹き込めるかー。譜面を図面に持ち替えた4代目社長の挑戦(前編)

錦正工業、自社製品の鋳物製ワインクーラーで世界に打って出る
鋳造業界に新風を吹き込めるかー。譜面を図面に持ち替えた4代目社長の挑戦(前編)

左は自社製品の鋳物製ワインクーラー。右は鋳造工程


運命的な技術の出会いからプロジェクトが動き出す


 今から3年ほど前の鋳造業界関係者の集まりで、浅田可鍛鋳鉄所(京都府福知山市)が開発した密閉中空鋳鉄技術と出会う。これまで鋳造技術では不可能とされてきた完全密閉中空構造を形成できるこの技術は、鉄の強度を維持したまま鋳物の重量を70%近く軽量化できるという画期的なものだ。

 永森は、その場で「この中空技術とうちの鋳造技術を使って何かやりませんか」と浅田に持ちかけた。そこから、永森の長年温めていた計画が動き始めたのである。
 
 同じ頃、永森はプロダクトデザイナーの平川貴啓とともに鋳鉄製のインテリアデザイン製品の開発を進めていた。そんな中での、中空化技術との出会いはまさに運命だった。二人の頭に、中空構造を形成することによって得られる、高い保温性と表面の結露防止効果を活かす製品アイデアが生まれたのだ。
 
 こうして、永森の想いから端を発し、「錦正工業・鋳物技術×浅田可鍛鋳鉄所・中空化技術×平川・デザイン」が掛け合わさって誕生したのが、鋳物製ワインクーラーである。そして、「FENA(フィーナ)」というブランド名が付けられた。FENAは、Fe(鉄)とNASU(那須)の造語。生まれ育った那須塩原の地を多くの人に知ってもらいたいという永森の地元愛が垣間見える。

先行発売は海外から


 FENAの初披露の場に選ばれたのは、昨年5月にドイツ・デュッセルドルフで開催されたGIFA2015(国際鋳造技術・機械展)。「世界で認められる製品を生み出したい。そのためにも海外での先行発売を考えている」(永森)。GIFAにプロトタイプを出品したことで、ヨーロッパだけでなく世界各国の来場者から様々な意見を収集できた。

 そして、この冬、永森の想いが詰まったFENAブランド第1弾となるワインクーラーがヨーロッパに向けて先行発売される。販売予定価格は900ユーロ(約11万5000円)。カラーバリエーションは6色で、ネームやロゴを入れた特別オーダーにも対応する。来月には、ドイツ・フランクフルトで開催される世界最大級のインテリア見本市Ambiente2016(2月12~16日)への出展も決定している。

 念願のオリジナルブランド製品発売が目前に迫っている永森だが、さらに大きな目標がまだ先にある。それは、独自の機械装置を設計開発し発売することだ。その実現のため、国内外から情報収集。いよいよ実現の目途が立ち、昨年暮れに全社プロジェクトとして動き始めた。
(敬称略)
(※1)レコーディング・エンジニアともいう。レコード、CDなどの音楽録音物の制作に従事し、音響の調整と録音などを行う技術者の呼称で、音響技術者の一形態。

鋳造業界に新風を吹き込めるかー。譜面を図面に持ち替えた4代目社長の挑戦(後編)
http://newswitch.jp/p/3258
FENAのフェスブックページ
https://www.facebook.com/FENA.Japan/
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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自社製品を作りたいと考える中小の加工メーカーは多い。特に2代目、3代目の比較的若手の社長。受託とのバランス、自己満足で終わらないために、中小メーカーをネットワーク化した緩やかなホールディングカンパニーみたいなものがあってもいいのかも(●●組合とかではなく)。

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