ニュースイッチ

半導体不足で生産悪化…ものづくり白書が指摘したこと

生産体制の再構築は急務

政府は、2022年版の「ものづくり白書」を閣議決定した。世界的な半導体不足の影響などを踏まえ、サプライチェーン(供給網)を強靱化する必要性を示した。部品や素材の供給制約、ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学リスクの高まりなど、製造業の経営環境は不透明感が強まっている。調達先の分散など安定した生産体制を維持する対策が求められそうだ。

ものづくり白書では生産状況について、2021年後半から半導体不足により悪化していると分析している。新型コロナウイルス感染症で停滞した経済活動が徐々に再開したことで、製造業は他業種よりも立ち直りが早かったものの、同白書は足元で原材料価格が高騰しているとした。製造業は収益を圧迫される可能性がある。

こうした状況も考慮し、同白書ではサプライチェーンの強化を今後の方向性として挙げ、国内サプライチェーンに対して、より多くの経営資源を投入しようとする企業が増加していることがうかがえるとした。大手、中小企業ともに調達先の分散や国内生産体制の強化などが加速することを見込む。

サプライチェーンの強化は今国会で成立した経済安全保障推進法の柱の一つでもある。政府は重要物資を海外に依存するリスクの低減を目指す。

一方、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けて、サプライチェーン全体の脱炭素化や二酸化炭素(CO2)の排出・削減量を可視化する取り組みが国内で拡大している点を指摘した。中小でも環境対応の意識が高まり、対策が進みそうだ。

このほか企業活動における人権の尊重やデジタル変革(DX)、サイバー攻撃対策、雇用・就業動向などをまとめた。同白書は経産省と厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成した。

日刊工業新聞2022年5月31日

編集部のおすすめ