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「北海道新幹線」カウントダウン!地元の期待、安全対策の全貌教えます

「北海道新幹線」カウントダウン!地元の期待、安全対策の全貌教えます

左下は15年12月に函館空港内に開設した土産物店。右は日本酒「みそぎの舞」を手にする東出邦夫さん


東京―函館間「4時間2分」はどうやって可能に?


 北海道新幹線は東北新幹線と接続して直通運転し、東京―函館間は最短で4時間2分と1時間以上短縮される。「はやぶさ」「はやて」が毎日13往復する。車両はJR東日本のE5系をベースにしたH5系で、4編成(40両)を新たに導入。時速320キロの走行性能があるが、開業区間(新青森―新函館北斗駅)は最高260キロで運行する。2030年度末には札幌までの延伸も予定されている。

 他の新幹線と比べ、貨物線とのレール共用や世界最長の海底トンネルである青函トンネル通過、厳寒期の雪対策などに特徴がある。

 最大のポイントは、3本レール(3線軌条)を新幹線で初めて採用したことだ。貨物線・在来線と線路幅が異なるため、片側のレールのみを貨物線と共用する。トンネル内で高速で擦れ違うと貨物列車が風圧で脱線する恐れがあるため、共用区間は当面、在来線特急と同じ時速140キロに制限する。全線約149キロのうち青函トンネル(約54キロ)を含む約82キロが共用区間で、同区間を通過する貨物列車は1日40−50本に上る。

 JR北の島田修社長は「全国初の挑戦と認識している。着々と準備を進めているが、予定通り安全に開業させることに全力を投じたい」と気を引き締める。JR貨物の田村修二社長も「安全が絶対と考えて準備している」と語る。

 雪対策では、風圧で雪を吹き飛ばすエアジェット式除雪装置や、線路を覆うスノーシェルターを新幹線で初めて導入。ポイント切り替え部分には電気融雪器も備えた。新函館北斗開業準備駅の鳴海正駅長(56)は「本州とは雪の降り方が違うので、雪への備えも万全にしたい」と話す。昨年に続き、今年も2月まで冬季の性能試験を予定。降雪時のブレーキ性能やポイントの切り替えのほか、貨物列車との擦れ違いなどの走行試験も行い、安全性の検証を進める。

 JR北は車掌や運転士、整備社員らをJR東に出向させて養成を進めてきた。15年8月に始まった訓練運転は、在来線が運行しない深夜に実施している。運転士の技量向上のほか、車掌の車内放送やドア操作、指令による運行管理など営業時を想定した運転を行い、トンネル内での火災など非常訓練も繰り返している。鳴海駅長は「訓練の仕上がりは順調」と胸を張る。準備を万端に整え、3月26日の開業を待つ。

北海道新幹線の最大の特徴は、海底長大トンネルである「青函トンネル」を走行すること。JR北は、トンネル内の避難施設を増やすなど、安全対策を強化している。保守などのコストを考慮し、運賃は他の新幹線に比べ割高になった。

このほか、JR北とJR東は相互に人的交流を進めており、JR東がこれまでの新幹線運行により培ったノウハウをJR北と共有する取り組みも進めている。

避難設備を増やし安全強化。JR東とノウハウ共有


 新幹線を初めて運行することになるJR北は、JR東との人事交流により、運転士の養成などを進めている。JR東は13年4月から開業支援の目的で社員の派遣を開始。これまでに、車両や電気、設備、工事管理などの11人を派遣しており、現在、8人がJR北海道で、準備作業に当たっている。

 一方、JR北から毎年20人程度の社員を受け入れており、運転士の養成のほか、車両の整備や、土木構造物の保守など、現場に入って共同で作業に当たることで、新幹線運行のノウハウを共有している。

 JR北は13年9月に函館線大沼駅で発生した貨物列車脱線事故をきっかけに、レール検査記録の改ざんが発覚。北海道新幹線の開業準備とは別に、JR東から社員の派遣を受けており、現在も、運行の要である鉄道事業本部に5人が在籍している。JR東の力を借りながら、新幹線の運行に対応する組織の強化を図っている。

 一方、安全面でも取り組みを加速している。JR北は15年4月に、青函トンネルを走行中の特急列車が発煙し、乗客124人が避難した事故を起こしている。この事故の反省に立って、避難所の設備などを増強する。

 青函トンネル内に2カ所ある「定点」という施設では、新幹線の定員に対応した待機用設備を増強し、地上までの誘導サインを新設する。地上と定点を往来するための「斜坑」を走るケーブルカーでは、通常時に荷物を運ぶ台車で、異常時に人を乗せて避難できるようにする。

 また、4カ所の「陸底部斜坑」という施設には、避難所設備を新設する。青函トンネルは海底の長大トンネル。このようなトンネルを通過する新幹線は過去に例がなく、十分な対応が求められている。
日刊工業新聞2016年1月1日 新春特別企画
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
我が地元の石川県は今も北陸新幹線効果で金沢などは人であふれかえっている。しかしあまりに多くの人が来すぎて、受け入れのインフラはもちろんお店や施設のサービスも低下しているという。地元の人たちも「評判があまり良くない」ことを自覚し始めている。北海道はどこまで混むのか分からないが「北陸」のことも教訓に。

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