電力のない環境でも電解反応を起こせる!?、東工大が流動電位で電解重合反応に成功
東京工業大学の稲木信介教授と岩井優大学院生らは、電解液が流れると生じる流動電位で電解重合反応を起こすことに成功した。3ボルトの電位差を作り、ピロールの重合反応を進めた。給電せずに電気化学反応を起こしたことになる。電力のない極限環境などで電解反応を起こす手法になる可能性がある。
マイクロ流路中に希薄な電解質溶液を流すと流路の両端に電位差が発生する。この流動電位は従来は数十ミリボルトだったが、有機溶媒と電解質の組み合わせを探索し、3ボルトの電位差を実現した。
電解質にテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファートを用いると上流側の電極が陽極となり、ピロールから電子が奪われてポリピロールが析出した。下流では水素イオンに電子が与えられて水素分子ができる。
電解質にホウフッ化リチウムを用いると陽極と陰極が逆転し、下流側にポリピロールの膜ができた。芳香族化合物のEDOTでも導電性高分子膜を形成できた。
今後、送液圧力を低減して適用の幅を広げる。現在は捨てられている圧力源を利用すれば環境に優しいプロセスになる可能性がある。
日刊工業新聞2022年5月30日