今、ネジ業界が面白い!
小型自動車で1台当あり約3000点。一方で本質的なネジ研究をする人材減る
日本ねじ工業協会・相澤会長インタビュー「進むべき道を示す」
ネジやナットはモノづくりにおいて欠かせない基礎部品。自動車をはじめ、建築、産業機械、航空機、ロボット向けなど用途はさまざまだ。2016年の年頭にあたり、日本ねじ工業協会の相澤正己会長(メイラ会長)へのインタビューを行った。
―2015年のネジの需要環境は。
「ネジのエンドユーザーはあらゆる産業で広範囲にわたっているため、各分野のデータを集計することは難しい。そのため、ユーザーの業種別で判断する必要がある。15年は工作機械向けが好調。そのほか、自動車や建築関連向けでは14年と比べて変化はなかった。そうした動向や、日本ねじ工業協会推計の国内生産高でみても15年度とほぼ変わらないだろう。円安基調で家電、カメラ、オートバイ関連など国内回帰への期待が年初にあったが恩恵は受けてはいないようだ」
―16年の見通しについては。
「工作機械向けは今のところ悪い話を聞くことはない。自動車については15年と変わらないだろう。しかし、リーマン・ショック以前の状況に戻るまでには至っていない」
「今後、ネジメーカーでは従来のユーザーだけでなく、新規ユーザーの獲得に向け技術力を駆使した締結部品をどのように開発し、いかにユーザーにアピールするかが重要になってくるだろう」
―日本ねじ工業協会が進めている重点的な取り組みは。
「国家検定化を目指している技能検定では、技能検定の改訂テキスト(ハンドブック)を完成させた。会員以外でも受験できる体制を整えている。そのほか、日本ねじ工業協会創立55周年の記念事業の一環で、15年7月開催の『MF―Tokyo2015プレス・板金・フォーミング展』に日本ねじ工業協会として出展した。ネジの実態を知ってもらうように、さまざまなネジを出展した」
「また、六角ボルトと六角ナットの日本工業規格(JIS)本体規格の切り替えについては、日本ねじ工業協会として20年までに生産・供給体制について整えると宣言している。本体規格の使用を推奨する活動に今後も力を入れていく」
日本国内で機械要素の意識が希薄に
―日本ねじ工業協会としての16年度活動の考え方は。
「基本的には15年度の活動を踏襲していく。その中で技能検定についての取り組みがある。国家検定にする上での課題が実技試験であり、審査方法や判定基準(公平性)をどう保つべきなのかを検討していきたい」
「その一方で、新たにドイツや米国などの先進諸国のネジ業界と定期的な意見交換会の機会を検討していきたい。国際標準化機構(ISO)の専門委員会『TC2(締結用部品)』の国際議長であるドイツねじ協会(DSV)のゼネラルマネージャーを招き、15年10月に日本ねじ工業協会と日本ねじ研究協会との共催で講演会と懇親会を開催した。その際に日本のネジ業界とドイツのネジ業界について話し合ったが、企業数や人員の構成など日本と共通する部分があり、大きな刺激を受けた。今後は国内から希望者を募ってドイツに赴くことも考えている」
「色に赤・青・緑の三原色があるように、機械にも重要な三要素がある。歯車、軸・軸受、そしてネジだ。しかし国内では機械要素に対する意識は薄れており、本質的なネジの研究をする人も見られなくなった。だが、ドイツは違う。今でも本質的なネジの研究論文を発表し続けるなど、日本以上に機械要素の重要性が認知されている。このような先進諸国と意見を交わすことによって、日本のネジ業界がこれから進むべき道を導きだしていきたい」