スズキが重要市場で3000億円投資、韓国・地場メーカーの追い上げかわせるか
スズキがインドで大型投資に踏み切る。電気自動車(EV)や車載用電池、4輪車の新工場建設などに計3000億円超を投じる。総販売台数の5割を占めるインドは、同社の成長に欠かせない重要市場だ。スズキはインドで長らくシェアトップの座を守っているが、韓国や地場メーカーの攻勢にあい、2年連続で市場シェアが50%を切っている。矢継ぎ早の投資により、ライバルの追い上げをかわす。(浜松・稲垣志穂)
「足元で好調な新車モデルを含めて販売を強化していきたい」。11日のオンライン決算会見で鈴木俊宏社長はこう意気込んだ。スズキはインドでの旺盛な需要を受け、2022年度のインドでの4輪車販売台数を前年度比11%増の151万5000台程度と見通す。
インド市場は今後も大きな成長が見込まれる。SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「この10年間に規模が3倍まで拡大する市場はインドしかない」と指摘。同市場は30年に1000万台規模になると予想される。
その中でスズキの課題は販売シェアの低下だ。インド自動車工業会によると、スズキのシェアは19年度の51%から21年度は43%となった。韓国の現代自動車や地場のタタ・モーターズの追い上げを許している。スズキは25年度までの中期経営計画でインドのシェア50%以上を目指す。その具体策の一つが大型投資だ。遠藤氏も「シェア縮小を阻止するためには投資が必要だ」とみる。
約1830億円を投じ、ハリヤナ州に4輪の新工場を建設する。年間生産能力は25万台で、同国での年産能力を計250万台に引き上げる。4輪では主力の小型車とともに、スポーツ多目的車(SUV)の車種拡充やEV投入で、激化するシェア争いに対峙(たいじ)する。
インド市場の死守にはEVがカギを握る。インド政府は深刻な環境汚染対策のため、30年に新車販売の30%をEVにする目標だ。EVは現在、タタなどが市場をほぼ独占している。
スズキは中計で電動化対応の遅れを課題に挙げ、5年間の研究開発費1兆円のほぼ全額を電動車の開発に充てる。25年までにEVのほか、モーター走行も可能なストロングハイブリッド車(HV)を投入する。
EVと車載用電池生産のため約1500億円を投じ、25年をめどにグジャラート工場(グジャラート州)でEVの生産ラインを立ち上げ、26年には同工場の隣接地に車載用電池工場を稼働させる。
インドでのシェア50%回復に向けて、今後も新工場建設などさらなる投資も予想される。これに加え、EVの効率的な開発には相互出資するトヨタ自動車との協業深化も不可欠。トヨタとは電池調達やプラットフォーム(車台)開発などを検討する。一連の大型投資や電動車開発は、スズキのインド事業の将来を占う試金石となりそうだ。