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ロボットがAI・シンギュラリティと交差する時代を語ろう

「日本がイノベーションの中心になることは間違いない」(西川PFN社長)
ロボットがAI・シンギュラリティと交差する時代を語ろう

佐倉氏(左上)、西川氏(右上)、松尾氏(左下)、松田氏(右下)


社会が新しい技術を受け入れるために


 松尾「今後、社会がどのように変わっていくかをお聞きしたい」

 西川「ロボット分野ではティーチングの自動化など。システム全体の自動化と最適化が社会全体で進んでいくだろう。もう一つは究極の安全性。ファナックのブースでディープラーニングを使い、特徴を自動抽出し、故障のタイミングをより正確に予測する異常検知を紹介した。これを発展させれば、より正確に予測し、行動を抑制することなどができる」

 佐倉「新しい技術を社会がどう受け入れるか。新しい技術導入の成功例、失敗例が参考になる。遺伝子組み換え食品は欧州で強く反発され、定着しなかった。英首相の科学顧問は『安全性の問題ではなく、価値の問題。消費者は遺伝子組み換えしてまで生産性を高めたような食べ物は欲しくない』と総括した。AIも多様な価値観の人たちとコミュニケーションを重ね、情報を共有して積み上げていくしかないだろう」

 松田「人間は知らないものに対して恐怖する。合理的な判断と情緒的な判断があり、人間は感情で動く。世間では機械が長じることを考えて脅威論を唱えるが、人間の知能増強だと考えればよい。自動運転のほうが人間の運転より圧倒的に安全だが、事故でけがをした人への責任は誰がとるのか。運転手は運転していない。ではコンピューターか。コンピューターを罰しても解決しない」

最後までなくならない仕事は謝ること


 松尾「奪われる職業というが、最後までなくならない仕事は謝ることだろう。精巧なロボットが涙を流して謝っても、怒りに油を注ぐだけ。人間社会は人間が形成している」

 佐倉「謝ることを機械に置き換えられないのが人間社会の本質的な部分だ」

 松尾「最後に全体の議論を通じて一言ずついただきたい」

 松田「少子高齢化で圧倒的に労働力が減ってくる。圧倒的に生産性を上げるためにはロボット化、AI化しかないと思っている」
 
 佐倉「フランケンシュタインの怪物があそこまで博士に恨みを持ったのは、人間社会が受け入れなかったからでもある。社会の反応はすごく大事なことだ」

 西川「ロボット技術の進化は“マスト”な事項。その時、日本がイノベーションの中心になることは間違いないと確信している」

 松尾「ロボットとAIがキーテクノロジーとなって、日本復活につながってほしいと思う。ありがとうございました」
モノづくり日本会議と日刊工業新聞社は2015年12月4日に国際ロボット展の併催事業として「AIロボットフォーラム」(協力=シンギュラリティを語る会)を開催しました。今回の記事はそのフォーラムからの抜粋です。
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
人工知能の研究開発や実用化に向けた動きが進む一方で、社会はその発展を受け入れる体制になっていない部分が多い。さらに議論を深めると同時に、スピード感を持って実現していくことが必要だろう。

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