企業倒産件数が半世紀ぶり低水準だったワケ
帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)がまとめた2021年度の企業倒産はいずれも半世紀以上ぶりに6000件を割る低水準だった。TDBは前年度比19・1%減の5916件で、1965年度(5593件)に次ぐ過去2番目の少なさ。TSRは同16・5%減の5980件で、1964年度(4931件)以来の低さ。前年度を下回るのは2社とも2年連続で、政府などによる新型コロナウイルス関連の資金繰り支援が倒産件数を抑える格好となった。
TDBは全7業種中、運輸・通信業を除く6業種が、TSRは全10業種中、運輸業を除く9業種が前年度割れだった。増加した運輸関係では、運転手不足に加えて、燃料価格の上昇、荷動きの落ち着きなどの影響を受けたと見られる。
同時にまとめた3月の倒産件数は、TDBが前年同月比9・4%減の587件で、10カ月連続で前年同月を下回った。10カ月以上の連続減少はコロナ禍以降では21年4月までの9カ月連続を上回り、最長となった。TSRは同6・4%減の593件で、3月単月としては32年ぶりに500件台の低水準だった。
コロナ禍での実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などによる資金繰り支援をめぐっては4月以降、本格的に元本返済が始まると見られる。足元ではコロナ融資の利用後に経営破綻した企業も急増している。
今後は「極端に倒産企業が増えることはないと見られる」(TDB)ものの、件数は夏場にかけて「底打ちから緩やかな増勢をたどる可能性が高まっている」(TSR)。
日刊工業新聞2022年4月12日