競合激化で慢性赤字、老舗企業「青汁」倒産の顛末
ミナト製薬は1928年6月創業の老舗企業であったが、年明けの1月、破産手続き開始決定を受けた。同社は創業当初、自社ブランド「ミナト鼻薬」で知られた医薬品メーカーであったが、78年の設備投資以降、健康食品の製造事業に進出し、現在の主力事業となった。青汁をメインに健康食品の製造のほか、OEM(相手先ブランド)製品を展開していた。
同社の主力かつ部門売り上げ80%程度を占めた「大麦若葉青汁」は、国産の桑葉・大麦にこだわっていたほか、公開特許の粉砕殺菌技術で同業他社と差別化を図り、栄養分を損なわない品質を実現。得意先に対する訴求力も高く、2003年8月期には売上高約25億2800万円を計上していた。
こうしたなか、22年1月5日、同社と連絡が取れないとの問い合わせが入った。現地には「年末年始休業のお知らせ」の張り紙があり、1月5日から通常通り営業を再開するとしていたが実際は、21年12月末に事業を停止していたことが判明した。背景には、健康意識の高まりで青汁市場の競合が激化したことにある。
慢性的に赤字を散発し、業績は低迷。この間、スポンサー候補の選定ほか、取引先に対して原料を一括で買い取ってもらうなどして窮状をしのいできたが、苦しい状況に変わりなかった。
過去に行った積極的な設備投資に伴う多額の借入金の返済負担も経営を苦しめた。倒産直前には恒常的に毎月1000万円を超える赤字を計上する状況に至っていたという。ついに年明け22年1月の手形決済のめどが立たず、事業停止した。
倒産間際、同社は調査会社への情報公開が急に消極的になっていたと聞かれる。情報開示姿勢の急激な変化は、当該企業の変化を察知するシグナルとなる。業歴100年を超える老舗企業の倒産劇の最後は、あまりに加速度的なものだった。張り紙にあった「通常通り営業します」の文言から当時の状況がうかがえる。(帝国データバンク情報部)
◇ミナト製薬(株)
住所:中央区銀座1-14-11
代表:義村三郎氏
資本金:5000万円
年売上高:約15憶200万円(21年8月期)
負債:約15億400万円