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パワー半導体需要を狙え。ニコンが27年ぶり「i線」露光装置投入

パワー半導体需要を狙え。ニコンが27年ぶり「i線」露光装置投入

ニコンのi線ステッパー「NSR―2205i11D」

ニコンは2024年度までに150ミリ―200ミリメートルのウエハーに対応したi線の半導体露光装置を投入する。同社が同タイプの新製品を発売するのは27年ぶりになるとみられる。従来機と比べてスループットを向上するほか、消費電力を低減する。i線は非先端の技術だが、車載用を中心に需要が広がるパワー半導体向けなどで引き合いが増えている。

新製品は1994年に受注を始めたi線ステッパー「NSR―2205i11D」の復刻版。現在の半導体露光装置は26ミリ×33ミリメートルの範囲を露光できる「スキャナー」方式が主流だが、22ミリメートル角の範囲を露光できる「ステッパー」方式の採用を検討している。露光時の縮小倍率は5倍。現時点で最も新しい縮小倍率5倍のi線ステッパーは「NSR―2205i14E」で、1997年に受注を始めていた。

i線の半導体露光装置は、パワー半導体やアナログ半導体など最先端の露光技術が必要とされない領域で需要が拡大している。特にパワー半導体向けは需要が強く、自動車の生産回復や電動化を背景に需要が伸びている車載用のほか、太陽光パネルや蓄電池といった再生可能エネルギー分野向けなどで使用されている。

ニコンの21年度の露光装置の販売計画台数は32台で、うちi線の装置が半分の16台を占める見通し。i線に続く非先端技術のフッ化クリプトン(KrF)の引き合いも強く、両装置の販売台数は前年度比10台増の24台の予想だ。両装置は中古装置での販売が主。ただ、古い装置では使用されている部品が廃盤になることもある。交換部品の入手が困難になっていた。

ニコンは露光装置のラインアップとして光源にフッ化アルゴン(ArF)液浸、ArFドライ、KrF、i線を使った製品をそろえている。波長が短いほど、微細な線幅の半導体回路を描くことができる。現在最先端の半導体製造には「極端紫外線(EUV)露光」装置が使われているが、同社は同装置の開発からは撤退している。これまでArF液浸、ArFドライの開発に注力していた。半導体用途の広がりを踏まえ、KrF、i線でもシェア拡大を狙う。

日刊工業新聞2022年3月17日

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