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高精度な「日本標準時」はどのように供給されているのか

高精度な「日本標準時」はどのように供給されているのか

おおたかどや山標準電波送信所(NICT提供)

正確に決めた時刻も、それが利用者に届くまでにずれてしまったら―。大量のデータを休みなく扱う現代では、1秒遅れの時刻情報が全く役に立たない場合も多い。

時刻はスマートフォンなどさまざまな媒体で配られている。情報通信研究機構(NICT)からは主に三つの方法で正確な日本標準時(JST)を供給している。

一つは長波帯標準電波である。おおたかどや山標準電波送信所(福島県、1999年開局)と、はがね山標準電波送信所(佐賀県、01年開局)の2カ所から開局以来累計1億台以上の電波時計にJSTを配信し、1秒も狂わない時計を身近にした。現在では、NICT本部(東京都小金井市)でのJSTの決定に、神戸市のJST副局と前記2カ所の送信所で運用する原子時計も利用し、より高精度にJSTを決める研究を行っている。

二つ目はインターネットを利用した時刻配信である。NICTではJSTに高い精度で同期して、毎秒100万回以上の時刻問い合わせに対応できる専用NTP(ネットワークタイムプロトコル)サーバーを開発し、本部と神戸副局からJSTを供給している。

NTPでは現在毎日50億回以上の問い合わせに応じており、更なる設備改良を予定している。NICTではインターネットを利用してhttp/httpsによる時刻配信も行ってきたが、22年3月末からNTPに一元化する。

以上二つの方法は簡便に利用できるが、電波受信の確実性への不安やインターネットからの悪意あるアクセスの懸念が残る。そこで三つ目のセキュアな方法として電話回線による時刻供給サービス「テレホンJJY」を提供してきた。このサービスは元々、アナログ電話回線を前提にしてきたが、近年の回線デジタル化で精度維持が困難になった。

そこでNTTひかり電話のデータコネクトサービスを利用し、1ミリ秒以下の同期精度に加えセキュリティーと確実性を備えた「光テレホンJJY」を19年から運用している。本部と副局で毎月8万回以上の時刻問い合わせに応じており、従来の「テレホンJJY」は24年3月末に終了予定である。

私たちは、情報通信網の進化に合わせ、より確実で正確な時刻の供給方法の研究開発を進めている。

◇電磁波研究所・電磁波標準研究センター 時空標準研究室 研究マネージャー 松原健祐 96年神戸大院修了。非常勤研究員を経て01年通信総合研究所(現NICT)入所。光周波数標準器開発、標準電波送信所設備更新に従事した後、21年から現職。博士(理学)。
日刊工業新聞2022年2月1日

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