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沸騰するアフリカビジネス、ビジネス環境・スタートアップの現状を語る

コロナ禍においても、アフリカには世界から熱い視線が注がれ続けている。アフリカのスタートアップに対する2021年の調達金額は過去最高の20億ドルを超えるとの試算もあるほどだ。2021年12月7‐8日には日アフリカ官民経済フォーラムの分科会がオンラインで開かれ、分科会1では、アフリカにおける日・アフリカ双方のスタートアップ企業の活動実体に焦点を当てた。経済産業省通商政策局の山中修審議官とアフリカビジネス協議会の羽田裕事務局長(豊田通商)が分科会を振り返りながら、アフリカビジネスの展望を語り合った。

広がるイノベーションの形

羽田裕事務局長(以下、羽田) コロナ禍で現地との往来ができない中、いま、アフリカで何が起こっているのか、特にフィンテック分野での投資資金流入の裏側で何が起きているかを確認する場になったのではないでしょうか。

分科会では昨年JICAが募集したビジネスアイデアでは、「食・農業」と「ヘルスケア」が件数ベースでトップ2だったことが紹介されました。ケニアのVC経営者からも「今後は生活に密着した分野、すべてにビジネスチャンスが広がる」というコメントがありました。アフリカでは、すでに金融分野でのビジネスモデル・イノベーションが一巡し、その進化が、次の段階に進んでいるといっていいでしょう。

生活に密着した分野にビジネスチャンスが広がる可能性がある(現地で展開するヘルステックサービス)

山中修審議官(以下、山中) そうですね。コロナ禍の状況においても、ヘルスケア、農業、教育、ファイナンス、インフラ、グリーン、ラストワンマイルなど多様な分野で底堅くビジネスが拡大していて、その中でスタートアップ企業が重要な役割を担っていることが確認できました。

 

そうした中で、アフリカの社会課題解決に注目した新たなビジネス分野のイノベーションに、デジタル技術の活用が、有効であることは改めて認識できました。

羽田 今年は第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が開かれます。ここ数回のTICADはビジネスが主役であるとし、投資規模に焦点が当たりがちです。ただ、イノベーションは、最初から投資機会やビジネスチャンスの顔をしていません。TICAD8では、現地で試行錯誤を重ねているスタートアップ企業や、NGO/NPOなど、課題に直面しているメンバーと、既存の組織・団体との協業の環境作りを議論する場に変えていけるように呼びかけていきたいです。

 
アフリカビジネス協議会の羽田裕事務局長(豊田通商)

山中 我々としてもそうした問題意識を踏まえ、アフリカ市場で、技術や経験を活かしながら、ビジネスチャンスを掴んでいこうとされる日本企業の方々などへの支援策を拡充していきます。

議論よりも行動を

羽田 社会課題解決の貢献を目的としたビジネスの可能性について、様々な事例紹介や議論がありました。今回、日本側からは、キャスタリア、日本植物燃料の2社に登壇いただきましたが、両社の「当初の事業プランから8割が変わっている」という声が印象的でした。アフリカでは現場の声に合わせて、まず自分たちが行動し、変化しなければいけず、アフリカの事業展開には柔軟さが欠かせないという点がよく分かりました。

山中 近年は大企業よりも、スタートアップや中堅中小企業のアフリカ進出の方が目立ち始めていますね。

フォーラムのサイドイベントには、HAKKI AFRICAという日本発Fintechスタートアップが登壇しました。ケニアには銀行口座を持たないために信用情報がなく車両を購入するための融資を受けられない方々が少なくありません。同社はタクシードライバーに対し、誰もが使う電子マネーの過去の利用データを自動解析する日本技術を活用して、信用力の可視化と金融サービスの低コスト化を可能にしました。デジタル技術でリスクとコストを低減することで、金融サービスへ簡単にアクセスできない社会課題にソリューションを提供した一例です。

単独進出だけでなく、ダイキンが日本のスタートアップ(WASSHA)とパートナーシップを組んだり、ヤマハが二輪配送サービスのスタートアップ企業(Max、クーリエメイトなど)へ投資するなど、展開の方法も多様化しています。

羽田 日本国内で、「デジタル技術を活用した社会課題解決にビジネスがどう貢献できるか」といった議論が活発になっていますが、重要なのは議論ではなく行動です。アフリカでは創業から10年も経たずに数百億円規模の資金を調達できるユニコーン企業も現れています。「ビジネスチャンスの顔」が見えたときには、手遅れかもしれません。協議会としては、現地の実状をメンバー企業に知ってもらう機会を増やしたいですね。

アフリカ進出を後押しするために

羽田 前例ありきではアフリカでは出遅れます。日本企業の皆さんに「進出するなら、今ですよ」と言うメッセージを、発信し続けたいです。現場で得る知見を他の日本企業にフィードバックし、シナジーを創る意図をもった仕組みをつくれれば、連動して日本企業によるアフリカ進出を後押しできると考えています。

山中 アフリカスタートアップへの投資額が年々増加していますが、日本からの対アフリカ投資全体は、それほど大きくありません。日本企業のビジネスの立ち上がり段階において、政府・公的機関からの支援は重要と考えています。

経済産業省だけでなく、JETRO、JICA、UNDP(国連開発計画)などに事業のF/S調査段階から実証フェーズのそれぞれのラウンドに合わせた支援メニューがあります。これらを拡充させたり、それぞれの支援メニューを効果的に連携させていくことがますます欠かせなくなります。

経済産業省通商政策局の山中修審議官

例えば、経済産業省の技術・人材協力課の事業では、資金面での支援に加え、現地政府や関係機関などとのネットワーク作りも合わせて支援しています。今後は、より事業規模の大きい、インパクトのあるビジネスへも支援予定です。

 

一方で、民間資金をよりアフリカに向かせることも重要です。民間資金導入にはリスク低減の必要性があります。この観点から、NEXI(日本貿易保険)は、アフリカ51か国の加盟国を有するアフリカ輸出入銀行との協業を通じて、民間だけでは対応できない資金リスクを低減させ、本邦市中銀行のアフリカ市場参画を促進しています。TICAD8に向けてもファイナンス強化は重要な課題です。アフリカ向けインパクトファンドのような新しい議論をフォローしつつ、経済産業省として何に対してどのような支援が可能か検討したいです。

羽田 いま、多くのスタートアップ企業が市場の真っただ中にダイブし、現実に合わせて変化し続けています。国には彼らの現実に合わせ、政策ツールの改善や新設を検討していただきたいです。 我々も、日本企業との対話・議論の場を継続して設定し、その声をしっかりと吸い上げることで、エコシステム形成の一助になればと考えています。

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