スズキが成果を出した、「部品調達難・原材料価格高騰」対策の中身
スズキが進める部品調達難や原材料価格高騰などへの対策が一定の成果を出している。半導体は2021年夏にサプライヤーへの在庫保有要請やサプライチェーン(供給網)可視化を本格化した結果、車両の減産幅を圧縮した。材料高騰対策では、材料切り替えとともに主力のインド市場で今期4回の値上げを実施。利益の減少幅を抑制した。こうした取り組みもあり、21年4―12月期の営業利益は前年同期比5・7%増と4期ぶりの増益となった。(浜松・市川哲寛)
スズキの22年3月期の半導体を含む部品供給不足による4輪車の減産影響は45万台。21年11月見通しの64万1000台より約20万台縮小した。
1次サプライヤーに対して半導体関連部品の数カ月単位での在庫を保有するよう要請。今まで以上の長期調達を協議しているサプライヤーもある。サプライヤー側は在庫がリスクになりかねないが、スズキは長期の取引を前提とすることで関係を強化し、安定調達につなげている。
また「サプライチェーン管理の強化が必要」(長尾正彦取締役専務役員)とし部品供給網を可視化した。部品や在庫などの状況から生産への影響を見極め、必要によっては工程変更などの対策をする。
これらで国内生産は期初計画に対して70%稼働を見込んでいたが81%の見通しに改善した。半導体関連部品の調達が厳しい状況でも、コネクテッド機能を搭載した軽自動車「スペーシア」を計画通り21年末に投入した。
インドではマレーシアのサプライヤーの影響が21年8月から出だしたが、その半導体関連部品を使わない輸出車の生産を増加。生産台数を確保している。
さらにインドでは値上げ対象車種平均で2%値上げした。高騰する材料の代替材料探しや軽量化などをしているが、それらではカバーしきれないとし値上げに踏み切った。
値上げにもかかわらず、従来ラインアップになかったスポーツ多目的車(SUV)を相次いで投入するなどの車種戦略もあって22万―23万台の受注残を抱える状況。需要が旺盛でインドでのシェアも回復した。今後はインド以外でも値上げを検討する方針。ただ日本は競争が激しく「値上げできない」(同)とみている。
半導体不足の影響は23年3月期も続く見通しだ。「需要が落ちているわけでなく、部品調達難で生産できない歯がゆい状態」(同)を、地道な改善で少しでも解消していく。