ノーベル賞候補・藤田東大卓越教授らが開設するオープンイノベ拠点、産学官の新たな連携モデルになるか

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オープンイノベ拠点「FS CREATION」の実験室

大学と企業がともに研究を進める産学官連携が増えてくる中で、両者が同じ場所で研究を進める拠点は少ない。ノーベル賞候補者に挙がっている東京大学の藤田誠卓越教授らは、三井不動産と東大が開設した分子構造解析の分野では初となるオープンイノベーション拠点で4月から新たな研究活動を進める。アカデミアと企業の研究がワンストップで進む日本の新たな産学官連携のモデルになり得るかもしれない。(飯田真美子)

これまでに、藤田氏らはどんな分子でも構造を解析できる「結晶スポンジ法」の応用を目指して社会連携講座を通して約20社と共同研究を進めてきた。その活動の中では企業の中で技術開発に生かせたり、新商品の開発につながった事例もあり社会への貢献にもつながっている。

藤田氏は大学での基礎科学の研究成果を企業などとともに応用研究や製品開発につなげることを重視する。ただ、大学での成果に理解ある企業ばかりではないのが現状で、成果に付加価値をつけて応用する仕組みが必要だと主張している。

その実現には、研究に必要な装置などが一通りそろっており、大学と企業の研究者が同じスペースで研究や談笑ができる空間が必要と考えていた。藤田氏は来年の定年を機に新たな拠点でその実現に向けた動きを見せる。

核磁気共鳴装置(NMR)。分子の構造決定に使う装置で、複数のサンプルを自動測定できる。今後、リモートでも測定できるようにカメラを取り付けたりする予定

藤田氏らの新たな研究拠点「FS CREATION」は、“Flagship Science”と、藤田氏と社会連携講座を主導する東大の佐藤宗太特任教授の頭文字をかけて名付けた。ロゴマークは布をつまんでできた山をイメージし、基礎科学を上へとリードすることで裾野となる技術が広がる姿を意味しているという。

同拠点は三井不動産が開発を手がけたが、フロアのデザインなどは藤田氏の意見も加わっている。その一つが気軽に誰とでも会話できる休憩スペースや講演などができる共用空間だ。さらに壁をなくして全面ガラス張りにすることで、休憩スペースからでも実験の様子が分かる仕組みだ。多くの大学は閉鎖的な空間で研究をしている実験室がほとんどで、情報共有の場は少ない。大学・企業ならではの考え方や意見を気軽に吸収することで、研究を進める上での視野が広がりそうだ。

さらに、同拠点には日本電子やリガク(東京都昭島市)、島津製作所の国内3大分析装置メーカーが入居し、各社が誇る装置が数台ずつ並ぶフロアを作った。1台数億円以上する装置が何台も備わっており、オープンイノベーション拠点として確立するための本気度が伝わってくる。

藤田氏と社会連携講座を進める佐藤特任教授は「世界に先駆ける産学連携での分子構造解析の研究をより一層アクティブに進めたい」と意気込みを語った。

日刊工業新聞 2022年2月18日

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