5G携帯端末の電波は安全なの?評価するNICT技術の仕組み

  • 1
  • 2
【SARプローブの較正システム】㊧:既存手法 ㊨:開発手法(NICT提供)

第5世代通信(5G)携帯電話のサービス開始に際して、電波という目に見えないものへの安全性に対する一部の公衆の関心はとても高くなっている。我が国では、電波の安全性を確保するために電波防護指針が策定されており、この指針値に従って携帯電話端末などの適合性評価が義務付けられている。

このように電波防護指針への適合性評価技術は公衆の安心・安全な生活には欠かせない非常に重要な技術である。我々が普段利用している4Gや5Gの携帯電話端末で主に使われている周波数帯(6ギガヘルツ以下)では、適合性評価法に基づいて比吸収率(生体組織の単位質量当たりの電力吸収量、SAR=Specific Absorption Rate)を測定し、比吸収率で示された指針値への適合性を確認している。

情報通信研究機構(NICT)では、携帯電話端末の電波防護指針への適合性評価技術に関して、測定技術の開発・改良や技術そのものの信頼性評価について取り組んでいる。この中でSAR測定に用いるSARプローブの較正手法の検討は重要な要素のひとつである。既存のSARプローブ較正手法では図の左にあるように生体等価液剤を充填した導波管内に発生する標準電界をSARプローブで測定することで行う。これを校正したい周波数ごとに適切なサイズの導波管を用いて実施する。

5G携帯電話端末ではそれ以前の携帯電話端末よりも高い周波数が用いられているが、導波管のサイズは周波数が高くなるにつれて小さくなることから、SARプローブが導波管に対して無視できない大きさとなり、導波管内の電界が乱れ、適切に較正が行えない。

この問題の解決のために、図の右にあるように導波管よりもはるかに大きな水槽内に既存手法の導波管と同様の役割のアンテナを入れ、そこから発生する標準電界(正確に測定が可能なアンテナ入力電力から計算できる電界強度)をSARプローブで測定し較正する新たな手法の開発を行っている。

この手法は高周波数に対応でき、周波数ごとのアンテナ交換の頻度が低いため、較正システムの簡素化も期待できる。私たちは電波の安全性評価技術の開発を通じて、安心・安全な生活に貢献をしていきたい。

電磁波研究所・電磁波標準研究センター 電磁環境研究室 研究員 清水悠斗
17年名工大院博士後期課程修了後、同年NICTに入所。電磁環境研究室で無線機器からの電波ばく露評価技術に関する研究に従事。博士(工学)。

日刊工業新聞2022年1月18日

キーワード
NICT 5G 携帯

関連する記事はこちら

特集

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用しています。オプトアウトを含むクッキーの設定や使用の詳細についてはプライバシーポリシーページをご覧ください。

閉じる